スマートフォン一つで予約から貸し渡し、解錠までを提供。24時間いつでもレンタカーを借りられる

 レンタカーの貸し渡しを非接触で完結する無人レンタカーが広がり始めている。トヨタ自動車が2019年秋に始めたトヨタレンタリース店の「チョクノリ」は、ステーション数と稼働車両台数がこの1年でおよそ3倍に増加。店舗の営業時間に関わらず好きな時間に出発、返却できる利便性の高さが受け、利用を伸ばしている。中堅レンタカー事業者がコロナ禍で落ち込むレンタカー市場での次の一手として選ぶ動きがあるほか、新規参入するスタートアップ企業も出てきた。

 トヨタのチョクノリは2019年10月にスタートすると20年5月に113拠点、稼働台数190台まで増加。その後は、今年5月末までの1年で303拠点、582台となるなど、右肩上がりで規模を拡大している。

 東京都多摩地区が地盤のトヨタレンタリース多摩(田村勝彦社長、東京都福生市)は、チョクノリのステーションを9カ所まで増やした。昨年4、5月は、コロナ禍による外出自粛の影響もあり利用が伸び悩んだが、同8月ころから利用が拡大しているという。利用者の半数を10~20歳代が占めるなど、若者の利用が目立つ。

 利用が伸びている要因のひとつが、24時間いつでも出発、返却できる気軽さだ。同社レンタル営業部の小山元博部長によると「以前から営業時間外の出発、返却を望む声はあった。チョクノリによってお客さまのレンタカー利用の自由度を高められている」という。コロナ禍で衛生面を気にするユーザーが増える中、通常のレンタカーと同様に利用のつど、スタッフが清掃、除菌することで安心感を高めているのも特徴だ。

 スタートアップ企業も無人化による低コスト運営を武器にレンタカー市場で新たなニーズを取り込もうとしている。20年11月に渋谷、恵比寿駅周辺で無人の「オールタイムレンタカー」をスタートしたバリュートープ(佐久間昌夫代表取締役、東京都渋谷区)は、当初約10台でサービスを始めると徐々に利用者を増やし、今年5月にはステーションを2カ所増設した。今後もさらに増やしていく計画だ。

 また、既存の中堅事業者では、空港や駅を中心にスカイレンタカーを展開するJ―ウィングレンタリース(武井英一社長、横浜市港北区)が7月から一部の店舗で無人レンタカーを始める。カーシェアリング同様の自由度と店舗で車両を管理するレンタカーの品質を両立させることで、新たな需要を取り込もうとする狙いだ。

 無人のレンタカーサービスは、観光需要の激減で市場が落ち込むレンタカー事業の効率化としても期待が掛かる。全国レンタカー協会(岩崎貞二会長)が会員事業者を対象に行った調査(回答177事業者)によると、5月のレンタカー予約件数(見込み)は、コロナ禍前の19年5月と比べて42・8%減となるなど、依然として厳しい状況だ。

 こうした中、貸し渡し時の対面による説明や返却対応などを無人化することで業務を効率化できれば、店舗運営側のメリットも大きい。

 バリュートープやスカイレンタカーにシステムを供給するスマートバリューでは、すでにほかの既存レンタカー事業者数社と無人サービスの導入に向けた話し合いを進めているという。コロナ禍で消費者ニーズが変化する中、レンタカーの形も多様化が進みそうだ。