デザイン性も訴求し、利用の心理的ハードルを引き下げる
高齢者の交通事故削減につなげたいと話す岡山ダイハツの三嶋社長

 電動車いすの販売に乗り出す自動車メーカー系ディーラーが増えている。高齢化の進展で自動車運転免許証を返納するドライバーが拡大する中、車に代わる新たな小型モビリティとして既納客に提案したり、地域住民の足を確保するためだ。28日には電動車いすの開発、販売を手掛けるWHILL(ウィル、杉江理社長、東京都品川区)と同社の製品を取り扱うディーラー16社が、高齢ドライバーの免許証返納を応援する取り組みを開始すると発表。自動車購入時さながらの納車式を行うなど、〝自動車を卒業〟した高齢者の移動需要を開拓する狙いだ。

 高齢化の加速を背景に、ディーラーも将来を見据えた新たなビジネスモデルを模索する動きを活発にしている。電動車いすの販売もその一つだ。ウィルとディーラー16社による新たな取り組みのオンライン発表会で、岡山ダイハツの三嶋與一社長は、「ディーラーが免許証返納を支援することに疑問を感じる人もいるかもしれないが」と前置きした上で、「人生100年時代にも心地よいライフスタイルを提供するために、免許証返納後も安全に乗れる乗り物を提供したい」と意義を説明した。

 警察庁の調べによると、2019年に免許証を返納したドライバーは初めて60万人を超えて6年間で4倍に増えた。20年は約55万人と減ったものの高い水準で推移する。一方、ウィルの調査では「高齢の親に免許証返納を勧めたことがある人」は13・6%と少ない。勧められない理由には「移動手段が無くなる・不便になるから」が68・6%と最も多かった。同社日本事業本部の池田朋宏執行役員本部長は「車が無くなったあとの生活の心配や、引きこもってしまうのではと考え積極的に勧められないのではないか」と見ている。

 現在、ウィルの電動車いすは、福祉関連企業や自転車販売店などで取り扱うほか、代理店を通さずに展開しているサブスクリプションサービスなどがある。一方、ディーラーによる取り扱い店舗は全国で約250店になるなど、重要な販売チャンネルの一つとなった。「クルマ文化が(日本で)定着したように、ディーラーと連携することで車の次の乗り物として定着させていきたい」(池田氏)と普及への意欲を燃やす。

 今回、ウィルとディーラー16社による取り組みは「新しいクルマに乗り換えよう」をスローガンにスタート。従来の電動車いすのイメージを払拭し、小型モビリティに「乗り換える」という新たな価値観を創出する狙いだ。岡山ダイハツの三嶋社長も「(従来の)シニアカーと比較するとデザインもポジティブ。(購入、使用の)心理的ハードルは低い」とベテランドライバーにも受け入れられやすいとみている。今後は、交通安全運動期間中に共同で啓発活動を行うなどし、新たな需要を掘り起こす。ディーラーで取り扱う「モデルC」の車両価格は47万3千円(非課税)。

 国内市場は少子高齢化などでシュリンクが避けられない状況だ。そうした中で、トヨタ系ディーラーを中心にオンデマンドバスなど地域の足を支える新事業に取り組む動きが広がりつつある。電動車いすの販売もこうした取り組みの一環。自動車の〝現役世代〟を退いた高齢者との接点を維持することで、新規ビジネス・サービスの創出にもつながると期待される。

 参画ディーラーは次の通り。

 ▽大阪マツダ▽福井トヨタ▽ネッツトヨタ神戸▽ATグループ (販売店=アトコ)▽カーエース広島(広島マツダ)▽滋賀トヨペット▽滋賀ホンダ販売(ホンダカーズ滋賀南)▽ホンダカーズ神奈川北▽岡山ダイハツ▽長崎トヨペット▽鹿児島トヨタ▽奈良トヨタ▽熊本トヨタ▽滋賀ダイハツ▽福井トヨペット▽ホンダカーズ神奈川西