矢野経済研究所(水越孝社長、東京都中野区)は、2020年の国内自動車アフターマーケット市場が前年比1・8%減の19兆14億円と2年連続で縮小したとの推計結果を発表した。19年10月の消費税増税や新型コロナウイルスの感染拡大によって新車販売台数が落ち込んだことがマイナスに影響した。21年は3密回避の移動手段としての需要が引き続き見込まれるとした一方、半導体不足による生産減少をマイナス要因に挙げた。

 推計値は「中古車」(小売り・輸出・買い取り・オークション)、「自動車賃貸」(リース・レンタカー・カーシェアリング)、「部品・用品」(カー用品・補修部品・リサイクル部品)、「整備」(整備・整備機器)、「その他関連サービス」(自動車保険・ロードサービス)の5事業の合算値で算出した。

 20年の自動車販売台数は新型コロナへの感染リスクが高い3密を避ける移動手段としての需要が高まった一方、半導体不足による生産台数の抑制から前年比11・5%減の459万9千台に落ち込んだ。新車の納期遅延により需要が中古車に向かった結果、中古車登録台数は前年比1・8%減の678万7千台と新車に比べマイナス幅は小幅だった。

 四輪車保有台数は保有長期化の傾向が継続し、19年は過去最多の7862万台だった。保有台数は人口減少やシェアリングサービスの拡大などから中長期的には減少が不可避とみられるが、3密回避の移動手段としての利用拡大が歯止めとなる可能性がある。

 21年は半導体の部材供給逼迫をボトルネックとして再び自動車生産台数が低下する可能性がある。他方、3密回避の移動手段としての自動車需要は継続的に存在しており、新車市場はプラスとマイナスの要因を抱え続ける。

 中古車市場は新車の納期遅延が常態化すれば中古車の流通量が減り、相場価格の高止まりが続く。一方、供給の逼迫が解消されると中古車の流通は増加しオークション相場は弛緩することが見込まれる。

 自動車部品・用品市場は新車・中古車販売の動向に、整備市場はコロナ下での車利用の状況にそれぞれ左右されるとみられる。自動車の利用機会の拡大は整備需要の増加に結び付く。このため今後の整備市場は、車両販売動向だけでなく、ニューノーマルな生活での人々の車利用にも依存すると考えられる。

 自動車賃貸市場は法人向けオートリースが減少傾向にある半面、個人向けはマイカー需要増加により成長し、市場全体としては成長を続ける。レンタカーは国内一般消費者による日常利用が重要となるため21年は回復するが、回復幅は小幅にとどまる。カーシェアリング市場は企業、個人両者の利用目的に合致し、市場拡大が続くと見込む。