負担の重い自動運転の開発から撤退するリフト

 トヨタ自動車は27日、米ライドシェア大手のリフト(カリフォルニア州)の自動運転開発部門を5億5千万㌦(約595億円)で買収すると発表した。トヨタは米ウーバー・テクノロジーズの自動運転部門を買収した米スタートアップ企業とも協業する。コロナ禍を機に苦境に陥っているライドシェア大手から自動車メーカーにサービスカーとしての自動運転開発がシフトしている。ただ、自動運転技術で先頭を走る米グーグル系のウェイモや、中国系スタートアップなど、開発競争は激しい。

 トヨタで自動運転技術の開発を担うウーブン・プラネット・ホールディングスがリフトの自動運転部門「レベル5」を今夏にも買収するとともに、リフトのシステムと車両データを活用して自動運転の実用化に向けて協業する。買収金額のうち、協業の詳細を詰めてまずウーブンが2億㌦をリフト側に支払い、残りの3億5千万㌦は5年かけて支払う。協業の進ちょくを見極める狙いとみられる。

 トヨタは本体に加え、ウーブン・プラネットやトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)で自動運転技術を手がける。今回の買収で研究者とソフトウエアエンジニアの人員が約1200人に増え、日本、米カリフォルニア州、英ロンドンの3極での研究開発体制が構築される。買収前のエンジニア人数は明らかにしていないものの、ウーブン・プラネットグループの社員は760人だ。

 米国でのライドシェア2位だったリフトは、ゼネラル・モーターズ(GM)が出資しており、自動運転車を使った配車サービスの開発に注力してきた。自動車業界で存在感を高めてきたライドシェア会社だが、コロナ禍で一転、外出自粛や不特定多数の人と乗り合わせることが敬遠され、利用者が激減して経営が悪化している。

 最大手のウーバーは昨年12月、自動運転開発部門を、自動運転開発のスタートアップであるオーロラ・イノベーションに売却した。ウーバーの自動運転開発部門に出資していたトヨタやデンソーはオーロラの株主となり、自動運転の開発で協業する。

 ライドシェア企業は、完全自動運転のサービスカーの開発に力を入れてきた。完全自動運転車は高額になるが、サービスカーとしての活用ならドライバーの人件費を削減できて、収益力向上が図れるからだ。しかし、ライドシェアの業績悪化で、多額のコストが必要となる自動運転の開発を継続することが難しくなっている。

 トヨタは「安全性」を最も重視するオーナーカー向けの自動運転や高度な先進運転支援システムと、「e―パレット」のようなサービスカーとしての活用を想定する完全自動運転車それぞれを開発している。ライドシェアが手がける自動運転開発部門を引き継ぐのは、実用化までのスピードアップを図るためだ。ウーブンのジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は「世界トップクラスのエンジニアや専門家、技術のリソースが集結することで、よりアジャイル(迅速)でスピード感のある事業活動を幅広く進めることが可能になる」とコメントした。

 ホンダは出資しているGMの自動運転モビリティサービス会社GMクルーズとの協業で、完全自動運転のサービスカーを実用化する。GMの「ボルト」をベースにした自動運転車両「クルーズ・オリジン」の試験車両を使って年内には日本で技術実証することも目指しており、サービスの実用化を急ぐ。

 完全自動運転のサービスカーに関しては、米国ライドシェアが相次いで脱落し、代わって伝統的な自動車メーカーが陣地を広げている。しかし、アルファベット(グーグル)傘下のウェイモは昨年秋から米国内で無人タクシーの公道試験を実施するなど、自動運転レベル4(一定条件下での完全自動運転)の技術では依然としてトップランナーを走る。中国バイドゥ(百度)は1月、ドライバーレスの自動運転車が公道を走行する許可を米国カリフォルニア州から獲得した。中国のライドシェア大手の滴滴出行(ディディチューシン)は2030年までにロボタクシーを100万台導入する計画を打ち上げている。

 自動車メーカー、異業種入り乱れて完全自動運転サービスカーを巡る主導権争いが本格化する。

(野元政宏、畑野旬)