綱川智新社長

 東芝は14日、同日付で綱川智会長が社長CEOに就くと発表した。車谷暢昭社長は同日開催した取締役会で辞任を申し出た。英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案を機に広がった経営の混乱は、トップが辞任する異例の事態に発展した。

 車谷社長は過去にCVC日本法人会長を務めており、関係を疑問視する声が出ていた。また、車谷社長の経営戦略などをめぐり、東芝内部で不信感が強まっていた。

 同日、記者会見した綱川新社長は「今回の体制変更で進むべき方向を変えることなく、反転成長で軌道に乗せていく。まずはステークホルダーの信頼構築に努める」と話した。

 三井住友銀行出身の車谷氏は2018年4月に東芝会長、20年4月に社長に就任。米国原子力発電事業の失敗などで経営不振に陥っていた東芝の再建に尽力し、今年1月には約3年半ぶりに東証1部に復帰させた。

 ただ、この間「物言う株主」との対立が激化。車谷氏自身の求心力も低下し、昨年7月の定時株主総会で再任賛成率が57%台の低さにとどまったほか、幹部社員らを対象にした社内調査でも不信任が過半数を占めていた。

 綱川氏は16年6月から社長を務め、主力の半導体事業売却などで負の遺産の処理に一定の道筋を付けた後、車谷氏に社長職を引き継いだ。今月7日、「物言う株主」らへの対応のため、執行役に復帰していた。

 〈プロフィル〉綱川 智氏(つなかわ・さとし) 1979年4月東芝入社。2015年9月取締役、代表執行役副社長、16年6月取締役、代表執行役社長、20年4月取締役会長。21年4月から取締役会長、代表執行役社長CEO。1955年9月生まれ。65歳。