10年続けた使用済み電池の再生化事業が成長軌道に乗る
電池モジュールの組み合わせを変えることでさまざまな用途に対応できる
18年に設立した浪江事業所
リーフ発売から10年が経過し、中古電池の本格的な回収期に入る

 日産自動車が世界に先駆けて電気自動車(EV)「リーフ」を発売してから10年。車両の本格的な代替期を迎え、中古電池の回収期に入る。将来的なEVの普及を見据えて設立したフォーアールエナジー(牧野英治社長、横浜市西区)は、これまで着実に使用済み電池の再利用に関する技術を積み上げ、今後は事業拡大のフェーズに突入する。世界的な脱炭素化の流れでEVの投入が進む中、他社に先行して進めてきた車載電池の適正評価の仕組みづくりや二次利用先の開拓は、電動車の残価を高め、車両コストの低減につながる。

 2010年12月のリーフ発売に先行して、日産は同9月に住友商事と共同でフォーアールエナジーを設立。車載用リチウムイオン電池の再利用技術の開発や製造、販売事業を展開している。当初は、車載電池の二次利用に関する調査からスタートを切ったが、段階的に事業を拡大。14年に使用済み電池を使った大型蓄電システムの実証を行い、18年に中古電池の再生に特化した工場として「浪江事業所」(福島県浪江町)を設立した。東日本大震災後初の新規立地として、復興のけん引役としての役割も担ってきた。

 日産の土井三浩常務執行役員は「正直今まで苦労はしてきたが、そのかいがあったというのが今の感想だ」と振り返るとともに、現在は事業が成長軌道に乗ってきたと見る。

 この10年間で再生電池の市場性が見えてきた。再利用電池の販売候補としては小型EVや電気バスのほか、工場のバックアップ用や大型蓄電設備まで多岐にわたる。すでにスマートハウス向けの家庭用リチウムイオンバッテリーシステムを供給しているほか、最近では、東日本旅客鉄道(JR東日本)と連携して踏切保安装置用で活用している。リーフ1台分の電池パックは48個の電池モジュールの組み合わせで仕立てており、ニーズや容量などに応じて組み合わせを変えることで柔軟に対応できるのも強みだ。

 今年度の使用済み電池の回収量は1千台。このうち、約600~700台を販売した。リーフの発売から10年以上が経ち、今後本格的な回収フェーズに入る。牧野社長は「今までは慎重に回収を見極めて事業をしてきたが、来年度からはかなりの台数が戻ってくるのでアグレッシブに営業活動を進める」としている。

 本格的な回収期への突入に際し、再生技術の高度化も重要となる。中古バッテリーの再生化に当たり課題となるのが評価だ。1つの電池パックの測定にかかる時間は4時間~4時間半。今後回収量の増加を見込む中、いかに測定時間を短縮するかが重要となるため「リーフの累計販売台数50万台を通じて得た市場データなどを使いながら測定をいかに簡略するかに焦点を当てて必死に取り組む」(牧野社長)としている。

 中古電池の適正評価の仕組みが確立され、二次利用が広がれば残価の向上につながる。牧野社長は「一番大事なのは、当社が10年後の電池をある価格で買い取るという形で日産にコミットすることだ」という。同ビジネスで「他社の一歩も二歩も先に行く」(同)日産とフォーアールエナジーは、今後使用済み電池のリユース事業の拡大によりEV価格の低減へと反映させていきたい考えだ。

(長谷部 博史)