トーヨータイヤのマレーシア工場

 国内タイヤメーカーが「選択と集中」を加速する。日系タイヤ3社が2月に発表した中期経営計画(中計)では、投資先の地域やセグメントを明確化する計画が目立つ。ブリヂストンは今後3年間で全生産拠点の4割を削減するリストラを断行しつつ、投資の大半をソリューションサービスなどの「ソフト」分野に集中する。横浜ゴムとトーヨータイヤは、大径タイヤや商用車用タイヤなど、付加価値の高いタイヤを重点分野に位置付ける。中国などの新興タイヤメーカーが低価格帯タイヤでシェアを伸ばしている中、各社とも収益重視の姿勢を鮮明に打ち出して生き残りを図る。(村田 浩子)

 「数ではなく、質を追う」―ブリヂストンの石橋秀一代表執行役グローバルCEOは、新しい中計を発表するオンライン記者会見で、シェアよりも収益を重視し「稼ぐ力を再構築する」方針を説明。3年間の中計期間中にグローバル165拠点の4割を減らす大胆なリストラ計画を打ち出した。削減は非タイヤの生産拠点が中心だが、タイヤ工場でも付加価値の高いプレミアムタイヤが生産できない工場やバイアスタイヤ工場を閉鎖、製品群も絞る。

 タイヤ販売数量を左右する生産能力を削減する一方で、ソリューションサービスを重点事業に位置付ける。中計では7千億円の戦略投資の半分以上を充て、新しい商品開発やサービスの導入地域を拡大する。従来の生産能力を拡充する設備を中心とした投資戦略を見直し、利益率が高いサービス分野に投資をシフトする。

 横浜ゴムでは、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)によって将来的に「個人所有の車が減り、法人車両の需要が増す」(横浜ゴム・山石昌孝社長)と予想、足元で全体の4割を占めるピックアップトラックやSUV向けタイヤの販売本数を、新しい中計期間中に5割以上に引き上げる。日欧米の先進国市場では、これら高付加価値製品に重点を置き、タイやインドといった新興市場の工場では、低価格タイヤの生産に特化するなどして差別化する。

 トーヨータイヤは、収益の柱となっている北米事業に投資を集中する。新しい中計期間に稼働する欧州のセルビア工場の生産能力の4割にあたる年間200万本を、北米市場向けに輸出することを決めた。供給体制を拡充して、北米販売シェアを現在の7位から5位へアップすることを目指す。

 製品群についてもSUVや商用車用など、高付加価値タイヤに特化する。北米市場向けに生産能力を増強しながらも大径タイヤの生産が難しいマレーシアのシルバーストーン工場は閉鎖を決めた。

 住友ゴム工業を含む日系タイヤ4社は、売上高営業利益率の低下に苦しんでいる。背景にあるのが中国などの新興タイヤメーカーとの価格競争だ。加えてCASE時代に対応したタイヤの研究開発など、増大する投資も大きな経営の重しとなっている。横浜ゴムの新しい中計では前中計と比べて研究開発投資が約2倍に増加、トーヨータイヤも4割増を計画する。

 「すべての事業を拡大するのではなく、持っているものを最大限生かし、独自の強みを発揮していく」(トーヨータイヤ・清水隆史社長)など、各社とも販売数量の追求を止めて、強みのある地域や製品に焦点を絞り込む戦略に転換する。無駄のない筋肉質な経営に脱皮して、競争力の高い独自の製品やサービスを投入できるかがタイヤメーカーの生き残りを左右する。