10年間で2度の大きな被害に見舞われた(トヨタカローラ福島西中央店、福島市、写真は14日撮影)

 13日深夜に福島県沖で発生した地震の影響で、新車、中古車販売店などでは建物の一部が損壊するなどしたが、営業活動はおおむね通常通り行われている。年度末に向けて車両販売や車検入庫が繁忙期を迎える中、各社は余震への備えや従業員、来店客の安全を確保した運営を続ける見通しだ。

 福島市では震度6弱を観測した。市内のディーラーの中には、ショールームのガラス破損や天井の落下、サービス工場の配管のずれなどが確認された。社員は、片づけに追われながら、通常通り業務にあたっている。

 福島日産の金子與志人社長は「県内で10拠点くらいが、大なり小なりの被害を受けた」と被害状況を語る。福島市の福島日産福島吉倉店は、割れたガラスの補修作業を専門業者が行っていた。後藤貴史店長は「立っていられないくらいの揺れだったが、社員の協力でお客さまを迎えて営業できている。ライフラインが問題ないことが助かった」という。

 トヨタカローラ福島(佐藤良也社長)西中央店もショールームのガラス破損や壁の亀裂などの被害を受けた。鈴木智店長は「10年間で2回の被害を受けてしまった。おおむね混乱もなく、お客さまから車の損傷などのサービスの連絡はまだ少ないが、自宅の片づけが済んだら増えてくるかもしれない」と状況を話していた。

 宮城県では、白石市などでガラス破損などの被害が確認された。また、仙台市内の企業や団体も棚から部品などが落下するなど、被害が発生している。

 宮城県自動車販売店協会(後藤誠会長)と福島県自動車販売店協会(金子與志人会長)、宮城県自動車整備振興会(石山稔会長)、福島県自動車整備振興会(佐藤良也会長)はそれぞれ、会員の被害状況の確認を進めている。宮城整振によると、ショールームのガラス破損などの被害が報告されている。一方、営業できないほどの被害の連絡は来ていないという。

 震度6弱を観測した宮城県山元町のナルケ自動車は、サービス工場のガラス破損やショールームの天井の一部落下などの被害を受けた。地震直後に発生した断水は、14日の午前中に解消した。成毛政孝社長は「震災以降、工場のリフトはすべて下ろして帰宅しているので、車両落下の被害はなかった」と震災の経験から被害を未然に防いだという。

 ヤナセ( ■(吉の士が土) 田多孝社長、東京都港区)は、仙台と郡山の一部拠点で軽微な被害を受けた。天井や壁などに損傷を受けたり、保管車両に小さな傷が発生したりするなどしたが、いずれも被害は小さく通常営業を続けている。人的被害は発生していない。

 中古車販売店も一部の店舗が損傷したものの、営業活動に大きな支障は出ていない。中古車大手のイドムによると、運営する中古車買い取り、販売の「ガリバー」などの店舗に現時点で被害は発生していないという。通常通り営業し、建物の状況などの調査は続けていく。ケーユーは、仙台若林店(仙台市若林区)で展示場の照明が故障するなどしたが、被害は限定的。全店舗で通常営業する。

 中古車オークション(AA)も通常通り開催される模様だ。月曜開催のホンダユーテック(中薗憲一社長、埼玉県和光市)によると、仙台会場(宮城県岩沼市)の集荷状況などに目立った影響はなく、15日も通常通り競りを行った。ユー・エス・エス(USS)東北会場(宮城県村田町)は、天井がはがれるなどしたものの、出品車両や人への被害はなく、17日のAAは通常通り開催する。

 トヨタユーゼック(北口武志社長、千葉市美浜区)のTAA東北会場(福島県郡山市)は会場に軽微な損傷が発生した。18日の競りは開催するが、余震の可能性もあるため、建物の安全性を確認したうえで、通常のAAか、外部応札のみで行う「テレワーク参加型AA」にするかを判断する。

 宮城県中古自動車販売商工組合(JU宮城、鹿野利德理事長)と福島県中古自動車販売商工組合(JU福島、小野圭一理事長)はAA会場に被害がなく、今週のAAも通常通り行う。またJU福島によると、15日午前の段階で会員の3分の1から状況報告が届いており、一部の店で壁紙の亀裂や預かり車への軽微な傷が付くなどしたという。