スズキ・ミャンマーのHP

 ミャンマー国軍によるクーデターで、現地に進出する自動車関連企業も安否確認などの対応に追われた。スズキやデンソーなどの製造業が稼働を止めたほか、同国に進出する一部の日系ディーラーも営業を停止した。道路インフラや通信環境も乱れており、現地企業には混乱が広がるほか、治安悪化など経済活動への影響が懸念される。

 ミャンマーでは2015年、国民民主連盟が総選挙に勝利し、民主化勢力による政権が誕生。民主化による経済成長を見込んで日系企業の進出も増えており、日本貿易振興機構によると、進出企業は11年度の約50社から433社(20年12月)に増えた。

 政権交代以降に政府が輸入規制や国内生産車の優遇策を打ち出した結果、自動車産業も拡大が進んでおり、16年に約4千台だった新車市場は19年に約2万2千台と増加。自動車メーカーでは90年代後半に進出したスズキのほか、日産自動車が17年に現地企業のタンチョンモーターへの委託生産を開始。トヨタ自動車も同国初の生産拠点を今月に稼働する予定だ。

 市場シェアの6割を握るスズキは、1日午前に国内の完成車工場を稼働させたが、同日午後から停止し、2日も従業員を自宅待機させた。「再開時期は未定。状況を注視する」(スズキ)と影響の広がりを懸念する。日産の委託生産先も稼働を停止。トヨタは新工場の稼働への影響を精査している状況だ。

 サプライヤーではデンソーがウォッシャーホースを生産するデンソーミャンマーの稼働を1日から停止した。

 ワイヤーハーネスを現地で生産する矢崎総業も従業員の安全を確保するため、1日午後から稼働を止めた。

 ミャンマーには日本の自動車ディーラーも複数社が進出している。栃木トヨタや福島トヨタなどを傘下に持つネザスホールディングスは現地企業との合弁会社を通じてトヨタ車を販売しているが、1日以降は営業活動を見合わせている。また、愛媛日産の合弁会社で整備事業を手がけるエナテックオートモーティブは営業を継続しているが、現地の情報を精査し、今後の対応を見極める方針だ。

 日本からの中古車輸出にも影響を与えそうだ。ミャンマーでは18年に右ハンドル車の輸入を原則禁止しており、日本からの中古車輸出はタイなど周辺国を経由する形で行われている。このため14年に年間16万台ほどあった輸出台数が20年には約2万7千台(日本自動車輸出業協同組合調べ)に縮小。中古車輸出に詳しい自動車流通市場研究所の中尾聡理事長は「これまでも政権移行後に中古車輸入政策が大きく転換してきた。今後の動向を注視する必要がある」と指摘する。