複数の電動パワートレインを用意する(写真はe-スカイアクティブG)

 マツダの商品ラインアップに新たに加わったコンパクトSUV「MX―30」には2つの使命が課されている。1つは他モデルとは異なるアプローチの「魂動(こどう)」デザインや観音開きの「フリースタイルドア」の採用で、ブランドの幅や顧客の幅を広げること。もう1つは電気自動車(EV)やロータリーエンジンを発電機とするレンジエクステンダーEV、そしてマイルドハイブリッド車(HV)と、複数のパワートレインを用意する電動化のマルチソリューションへの挑戦だ。

 2019年10月。東京モーターショーのマツダブースで世界初披露されたMX―30は、同社初の量産EVとして登場した。当時、まずは欧州市場でEVを販売し、日本市場にも投入するとしていたが、20年10月に日本向けはEVに加えてマイルドHVを用意することを明らかにした。

 当然ながらMX―30は当初から複数のパワートレインを展開する前提で開発を進めてきた。昨年10月にEVのみ発表した狙いについて、開発責任者の竹内都美子主査は「まずはEVを欧州に、というメッセージをいち早く届けたかった」と明かす。欧州の二酸化炭素(CO2)排出規制に対応するため各社はEV投入を急いでいる。また、「欧州では公共駐車場の料金がEVだと無料となるなど、ガソリン車に比べてEVの方がむしろ選びやすい」(竹内主査)風土ができつつある。日系メーカーの中でも欧州の販売比率が比較的高いマツダはいち早くEVを市場に送り込む必要に迫られていた。

 一方、マツダの顧客層を広げるという新型車に課せられた挑戦に対し、EVだけでは日本市場において「敷居を上げることになりかねない」(竹内主査)としてマイルドHVを販売の主軸に据える。パワートレインは国内初投入となる「スカイアクティブG」にマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「e―スカイアクティブG」だ。高効率ガソリンエンジン「スカイアクティブX」でなくスカイGとしたのは、「よりお客さまが選びやすい商品にしたかった」(同)からだ。

 MX―30のプラットフォームは「マツダ3」から採用する「スモールアーキテクチャー」。同プラットフォームは、効率性を高めるマツダの「一括企画」によって、当初からマルチソリューションを想定して開発した。バッテリーを搭載するEVはガソリン車に比べて重量が重くなる傾向にあるが、車両開発本部車両開発推進部の森谷直樹副主査は「スモールアーキテクチャーはEVの重量増も想定して開発している。EVやHVなどマルチに対応できるポテンシャルを持つプラットフォームだ」と自信を見せる。MX―30は、スモールアーキテクチャーを活用して車両開発を効率化しつつも「新しい価値のクルマを生み出すことができる」(森谷副主査)実力を示した。

 マツダはこれまで、既存の自動車の価値に捉われないモデルに「MX」の名を付けてきた。代表例がオープンスポーツカー「ロードスター」の海外名「MX―5」だ。マツダ100周年の節目の年に投入する新たなMXは、同社初のEVを含む電動車のマルチソリューションとフリースタイルドアの採用などで新たなクルマの価値提供に挑戦する。