楠見雄規(くすみ・ゆうき)常務執行役員

 2022年4月に現行のカンパニー制から持株会社制に移行するパナソニック。新生パナソニックの舵取りを任された。13日の記者会見では「2週間前に内示を受けた。社長としての心構えはまだ十分ではないが」としつつ、「低収益の事業がある。競合他社が多い中でスピードなどが(他社の)劣後に回っている。事業ごとにいかに競争力をつけていくかということに尽きる」と現状の課題解決に熱意を語った。

 電池やテレビ、家電、車載事業など経験は多岐にわたる。中でもテレビ事業での「dボタン」の企画・開発を最も印象深い業務として挙げた。「商品が店頭に並び、実際に見に行った。ちょうど店員がdボタンの実演中で、お客さまが『すごい』と言っているのを見て涙した」。ものづくりへの熱意、現場の反応を自ら確かめに行く行動力が垣間見える。津賀一宏社長は「バックグラウンドが私に近い。彼は現場にしっかり密着する〝ねちっこさ〟がある」と評価する。

 楠見氏自身、「事業を動かしているのは現場の人だ」と強調する。そのため「現場の方のモチベーションアップや地道なカイゼン活動も競争力を積み上げていくことに通ずる」とし、今後は社員らに忌憚(きたん)なく助言してもらえる風土づくりも進め「トップの耳にもいろんな情報が届く」環境も整えていく。

 トヨタ自動車との角型電池事業の協業にも携わるなど存在感を示してきた。車載事業については「まだ道半ばで強みを具体的にはっきりさせている段階ではない」とする。ここ2年間、赤字が続いていたが20年7~9月期は51億円の黒字転換を実現した。また、テスラ向け事業も19年度後半に黒字転換を果たし今年度は初の通期黒字化を見込んでいるが、「どのような競争力をつければ(黒字化を)継続できるのかを見極めている」と慎重な姿勢は崩さない。

 津賀社長は車載事業を成長柱の一つと位置付けたが、楠見氏は「この事業が強いということではなく各事業が他社に負けない強みを持っていけるかを見ていく」考えだ。パナソニックの「核」となる事業を掘り起こし、さらなる成長に導く。 (藤原 稔里)

 〈プロフィル〉1989年3月京都大学大学院工学部修了、同年4月松下電器産業(現・パナソニック)入社、18年オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社副社長、19年常務執行役員、オートモーティブ社社長。1965年1月生まれ、55歳、奈良県出身。