プロドライバー並みのテクニックで高速周回路を走るエンジニア
新型レヴォーグ(手前)と旧型
新型ではアイサイトは運転支援機能をより高度化した
システムによる運転は熟練ドライバーのような挙動を実現
計測や評価を一貫して行う開発体制がスバル車らしさを再現する

 水平対向(ボクサー)エンジンや運転支援システム「アイサイト」など独自技術を磨き続けるスバル。中村知美社長が「今持つ新しい技術を惜しみなく詰め込んだ」と語る新型「レヴォーグ」は走行性能や運転支援の性能を旧型よりも大幅に引き上げたが、その進化に貢献したのが「スバルドライビングアカデミー(SDA)」だ。開発者がテストドライバーを兼ねる同社では、エンジニアの運転スキルを磨くSDAを2016年からスタート。〝走れるエンジニア〟の存在が「安心と愉しさ」を標榜するスバル車の開発を下支えしている。

 栃木県佐野市にあるスバル研究実験センター(SKC)の高速周回路を時速200㌔㍍で「WRX」と「BRZ」が隊列を組んで走り抜けた。さながら航空自衛隊の曲技飛行隊「ブルーインパルス」のような高度な運転技能でテストコースを疾走するのはプロドライバーではなく、SDAのメンバーで車両開発に携わるエンジニアだ。

 スバルではエンジニア自らが試験走行を行うため、専属のテストドライバーを配置していない。エンジニアが「乗って(運転スキル)」「感じて(評価能力)」「考えて(理論的思考)」「物理にする(計測技術)」の作業を一貫して行うことで、細かい走りのニュアンスをクルマに織り込むことを可能にしている。

 こうした中、走行性能や安全性能においてより高みを目指すため、エンジニアの運転スキルを引き上げるSDAを設立した。シャシーなどの機械系やアイサイトなどのソフト系を問わずこれまで約40人が受講し、高いドライビングスキルを有するエンジニアが車両開発にあたっている。SDAの立ち上げから約4年、成果が全面的に盛り込まれたのが今回の新型レヴォーグとなる。

 運転支援システムのアイサイト上位版としてレヴォーグに新規設定した「アイサイトX」では、3D精度地図などの採用で渋滞時のハンズオフアシストやアクティブレーンチェンジアシストなど、より高度な運転支援を実現した。ただ、アイサイトXではシステムによる運転操作を高度化するだけにとどまらず、熟練ドライバーのような自然な挙動の再現を目指した。

 アイサイト開発を担当した第一技術本部車両研究実験第四部の阿部幸一主査は「上手なドライバーのデータを取って、機械にやらせるために数値化してアルゴリズムに落とすことを徹底的にやった」と明かす。例えばレーンチェンジアシストでは、システムによる安全な操作はもちろんのこと、熟練ドライバーのように「一発でスッと収まる、『Gの角』が出ないような滑らかな挙動」(阿部主査)の再現にこだわったという。

 走行性能についてもスバルらしさを数値化し、工業製品として商品化するため、独自の台上試験装置を導入する。足回りではハンドルを切った際のサスペンションの動きを分析する装置やタイヤで発生する力を分析する装置などで数値化し、さらに目標の性能達成に向けた車体、サスペンション、タイヤなどのシミュレーションによる性能検討、そしてテスト車両による走り込みに至るまでを走れるエンジニアが徹底して行い、クルマを鍛え上げている。

 「ともすればクルマの走り味は職人芸的だと思われがちだが、当社では徹底的に数値化、理論化している」―。藤貫哲郎執行役員CTOは「スバルは特に(職人芸的だと)思われがちだが」と前置きした上で、エンジニアが自身で走って、感じて、それを数値化し図面化できることが「スバルの圧倒的な強み」だと強調する。SDAによってその強みがさらに引き上げられ、走れるエンジニアが磨き上げた新型レヴォーグは、中村社長が「日本でのフラッグシップモデル」と自負するほどの仕上がりとなった。

(福井 友則)