車内置き去りによる幼児の死亡事故が後を絶たない(写真はイメージ)

 大手サプライヤーが車内の幼児置き去り検知システム向けに、60㌐㌹帯ミリ波レーダーの開発を加速している。レーダーは物体への透過性を持つことや照度変化に左右されない環境耐性を持つ。特に最大帯域幅7㌐㌹の60㌐㌹帯ミリ波レーダーは高い距離分解能を持ち、高精度の物体検知を可能にする。アルプスアルパインなど各社は、自動車アセスメント「ユーロNCAP」に幼児置き去り検知が試験項目として加わる予定の2022年頃までの実用化を目指す。

 パチンコホールの駐車場などで車内に長時間放置された幼児が、熱中症の疑いで死亡する事故が相次いでいる。全日本遊技事業協同組合連合会によると、そうした車内放置死亡事故は、1998年以降30件発生しており、08年からの11年間では8件に上るという。 

 こうした事故は日本に限ったことではなく、欧州の消費者団体が手掛ける自動車アセスメントのユーロNCAPは、幼児置き去り検知を22年にも試験項目として加える方針を示している。今後、日本の安全テストにも反映される可能性がある。悲惨な事故を未然に防ぐため、アルプスアルパイン、インフィニオンテクノロジーズ、ヴァレオ、フォルシアの事業部フォルシア・クラリオン・エレクトロニクスなどが、自動車メーカーとともに幼児置き去り検知システムの実用化を急いでいる。

 各社が採用するのは、60㌐㌹帯ミリ波レーダーだ。レーダーは電波なので、物体を透過する。幼児がブランケットを被っている場合や、シートの死角にいる場合でも検知が可能だ。照度変化にも影響を受けず、立体駐車場などの暗い場所でも、検知精度が落ちない。天井に1個設置すれば良いので、「低消費電力での検知が可能」(アルプスアルパイン)だという。

 幼児置き去り検知システムは、車のエンジンを切った状態でも、長時間稼働しなければならない。カメラやシートごとに内蔵する加重センサーでの検知では、複数個必要になるため、消費電力が大きい。

 最大帯域幅7㌐㌹の60㌐㌹帯ミリ波レーダーを採用する理由は、2・14㌢㍍という距離分解能の高さにある。2つの物体が最低2・14㌢㍍離れていれば、1つでなく2つの物体だと認識できる。距離分解能15㌢㍍の77㌐㌹帯ミリ波レーダーより高精度な検知が可能だ。また、60㌐㌹帯ミリ波レーダーは電波の1周期が5㍉㍍と短いため、「約1㍉㍍の微細な体表変動を検知する」(インフィニオンテクノロジーズジャパンのパワー&センサーシステムズ事業本部でシニアエキスパートを務める浦川辰也氏)。

 胸や肩の微細な振動から心拍数や呼吸数を割り出すため、健康確認も可能だ。例えば、置き去りにされた幼児が熱中症などで危険な状態に陥った場合、自動で空調設備を稼働し、警察や消防に連絡するといったシステムなどにも展開できる。

 今後、車載センサーを長年手掛けてきた各社の技術が、次世代に向けた車内の安全を下支えすることになりそうだ。

(赤石 達真)