ダイヤモンド電機 鳥取工場

 ダイヤモンドエレクトリックホールディングスが再建に向けて動き出した。傘下のダイヤモンド電機は、電子機器事業の再編に取り掛かる。同社の鳥取工場で手がける電子機器事業を、新潟ダイヤモンド電子(新潟県燕市)と田淵電子工業(栃木県大田原市)に2020年12月から順次移管する。同事業に特化した拠点に移管・集約することで、製品・技術の開発スピードを上げる。また、自動車事業に比べて収益性が低いため、集約化により収益構造の改革にも着手する。

 同社は13年、点火コイルで米国の独占禁止法に違反したことによる和解金や弁護士費用などで、最低でも85億円の特別損失を計上した。「一度はつぶれかけた会社」(小野有理社長)が、再建に向けて本格始動する。電子機器事業の移管により、鳥取工場では当面、主力の点火コイルなど自動車機器事業の開発や生産に集中することになる。「自動車業界でもう一度やり直す」(同)姿勢で、点火コイルトップシェア獲得や電動化に向けた取り組みを加速していく。

 電子機器事業では、エアコンの室内機用コントローラーユニットや室外機用インバーター、太陽光発電用パワーコンディショナーなどを生産している。自動車機器事業に比べ収益性が悪いことから、小野氏が社長に就任した16年から事業再編の構想があった。18年にはパワーコンディショナーを主力とする田淵電機を買収。ダイヤ電と田淵電の二人三脚で電子機器事業の拡大に向けた取り組みを進めている。

 今年に入り新型コロナウイルスが世界的にまん延したことを受け、自動車機器事業は20年3月期決算で営業利益が前年同期比97・3%減と大幅に減少。電子機器事業を自動車機器事業でカバーすることが難しくなり、6月に希望退職者の募集に踏み切った。退職者は45歳以上の正社員や嘱託社員などを対象とし、150人程度を募集したところ鳥取工場からは133人、本社などから32人が希望退職に応じた。

 退職者募集の発表後、小野社長は「鳥取工場自体を閉鎖したほうが経済合理性は高かった」と言及した。ただ「取引先との関係性だけでなく、カイゼンの実践や生産技術向上の場として絶対に残すべきだと考えていた」ことから、点火コイル含む自動車機器事業を残すことを決断。鳥取工場には、自動車関連メーカー100社以上が毎年訪問していることもふまえ、自動車部品メーカーとして点火コイルの国内生産を維持したことは、ダイヤモンド電機の決意の表れでもある。

 鳥取工場は第1~3工場、デバイス工場、テクニカルセンターがある。第1工場と第2工場の1階では点火コイル、第2工場の2階では電子機器、第3工場は評価試験やエアコンコントローラーの組み立てなどを行っている。電子機器事業の移管による空きスペースは「新規事業を含め、最適な活用方法を検討中」(同)で、有効活用できる方法を模索している。

 現在、点火コイルのシェアは世界3位。電気自動車(EV)の普及により「いつかはなくなる部品」(同)と危機感を持つが、「電動化が進んでも、点火コイルの新技術や新製品の開発は止めない」と強調する。新技術開発専任担当者を置いたり、自動車メーカーからの人材を迎え入れるなど、点火コイル技術に関する体制を強化しており「コイルの技術革新を継続して生き残る」方針はぶれない。主力の自動車機器事業を軸に、ダイヤモンド電機が〝再点火〟する日は近い。

(藤原 稔里)