日産は乗り合い型の移動サービスを通じて地域の活性化を狙う

 自動車メーカーが、地域の新たな移動サービスの実用化に向けた取り組みを加速している。日産自動車は京浜急行電鉄などと共同で、横浜市金沢区で有償の乗り合い型の配車サービス実証を2021年初めに開始する計画。ソフトバンクとトヨタ自動車などメーカー8社が出資するMONET(モネ)・テクノロジーズ(宮川潤一社長兼CEO、東京都千代田区)は、MaaS(サービスとしてのモビリティ)利用を想定した車両の受注販売を始めた。異業種の参入も進み、各社が本格運用を見据えたフェーズに入った。

 日産はこれまで、電気自動車(EV)など電動車を使ったシェアリングサービス「日産eシェアモビ」や、ディー・エヌ・エー(DeNA)との無人運転技術を使った配車サービス「イージーライド」を通じて移動サービスのノウハウを積み重ねてきた。乗り合い型の移動サービスに参画するのは初めてとなる。

 京急電鉄、横浜国立大学、横浜市が18年から横浜市金沢区で実施している実証プロジェクト「とみおかーと」に日産が本格的に参画する。

 3年目を迎えた今年度は、事業化の検証に向けて無償と有償サービス期間の2段階で実施する。11日~12月11日までの無償実証期間後、21年1月中旬以降から約50日間有償のサービス実証を行う。路線定期運行・フリーエリア運行に「セレナeパワー」や「NV350キャラバン」などを用い、乗り合いで目的地まで送り届ける。専用アプリで当日の利用15分前の配車予約や手を挙げての乗降などが可能になる。日産の星野朝子執行役副社長は同実証プロジェクトについて「運行性や受容性、事業性を含めてモビリティサービスの未来の一つのモデルとして、将来の事業化につなげていきたい」と語った。

 MaaSの普及を見据え、1台の車両を複数の用途で使用する動きも出ている。モネ・テクノロジーズは、8月末からバン型のマルチタスク車両の受注販売を始めた。自治体などの「MaaSの方法が分からない」という声に応えた。フロアのレイアウトを自由に組み替えて、人の輸送をはじめオフィスや店舗など複数の用途で利用できる車両を提案することで自治体や企業のMaaSの実現につなげる考えだ。

 異業種も自動運転の実用化を見据え、地方都市を中心とした移動サービスの事業化を模索する。賃貸住宅大手の大東建託は今年6月から、居住者用の移動サービスの構築に向けた基礎研究を開始した。同社は約1300の自治体に物件を保有し、入居者数や車の保有台数など豊富なデータを有する。これらを用いて、地域ごとに移動サービスを導入した時の移動需要に関する研究を進めている。こうした研究は、「自動車や不動産業界でも前例がない」(大東建託の賃貸未来研究所・AI―DXラボの宗健所長)。MaaS車両として期待される自動運転車の実用化を見据えた動きが他業界からも出てきている。

 (長谷部博史・村上貴規)