街中ベストなコンパクトEVに仕上げた

 ホンダが初の量産電気自動車(EV)である「ホンダe」を国内にも投入する。「街中ベスト」をキーワードに小回りや加速性能など乗り味を重視する一方で航続距離をあえて200㌔㍍後半と短めに設定したコンセプトは、〝航続距離至上主義〟だったEV市場で異質の存在となる。ただ、新たに開発した新型プラットフォームや技術への投資を回収するには、EVの市場はまだまだ小さすぎる。ホンダが儲からないEVを投入する意義を探る。

 「この価格ではさすがに売れない」「うちは降雪地帯だからなおさらだ」―。ホンダがホンダeのデモカー配備希望台数を販売店に問い始めた今年上旬、新型EVに対する販売現場の目は冷ややかだった。

 ホンダeのエントリー価格は消費税込みで451万円。新型プラットフォームの採用に加え、5つのモニターを一体設計した大型スクリーンやデジタルドアミラーなど「技術のショーケース」といえる搭載技術の数々を考えると「割高」とも言い切れない価格設定ではあるものの、販売現場にとって売りにくい車であることは違いない。メーカー側も販売現場の受け止め方は百も承知で国内の年間販売台数は1千台と極めて少ない台数に設定した。開発責任者の一瀬智史氏も「収益性が厳しいのは事実」と認める。

 それでもホンダがEVの投入に踏み切った理由は大きく2つに分けられる。1つは言うまでもなく欧州の環境規制対応だ。2021年に本格的に始まる新規制では、走行1㌔㍍当たりの二酸化炭素(CO2)排出量をメーカー平均で95㌘以下に抑える必要があり、調査会社の調べによるとホンダの罰金額は数百億円相当になる見通し。ホンダは社内で「CAFEファイター」と呼ぶホンダeや「ジャズ(日本名=フィット)」の販売台数を伸ばし、ペナルティーを減らす考えを示す。

 しかし、罰金の支払いを短期的に避けるだけであれば、コストをかけずに割安なEVを投入し、価格勝負で台数を稼ぐ選択肢もあったはずだ。ホンダが新型EVに最新技術を詰め込んだのは、環境規制の対応以上に「MaaS(サービスとしてのモビリティ)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を現実にし、今後のモビリティの回答を示したかった」(一瀬氏)ためといえる。

 ホンダは電動モビリティをシームレスに組み合わせた「eMaaS」という移動の将来像を描く。ホンダe単体をMaaSの中で使用するのだけではなく、「ホンダeに入れた新しいアイデアをもとに社内も社会も新しいアイデアを積み重ねて未来を形成していく」という役割を見込む。実際、ホンダeの開発後に社内では「ホンダeをベースにあれをやりたい、これをやりたいという話が盛んに行われている」と手応えは上々だ。

 足元の収益貢献度は低くとも将来を見据えてホンダeの訴求に力を入れる国内の販売店も増え始めた。ホンダの急速充電器設置拠点数が200拠点にとどまる中、ホンダ泉州の大塚雅仁社長は「現時点での想定台数は決して多くはないが、今後のホンダ車の大本命となるクルマ」とし、充電器の設置拡大に乗り出した。

 ホンダは初の量産EVとなるホンダeを「ホンダの未来を示すモデル」に位置付ける。ホンダが〝e〟でどのような未来を描くのか、検証する。