ネット通販でリアルの展示場では取り込めなかったユーザー層を開拓する

 インターネット上で中古車の車両検索から購入申し込みまで完結できるオンラインストアを開設する動きが広がっている。トヨタ自動車は、系列ディーラーが出品する中古車のネット販売サイトを8日に開設。納車以外は来店不要となる新たな販売形態をスタートした。ネット通販大手の楽天も、他の産業と比べて電子商取引(EC)比率の低い自動車領域に伸びしろがあると判断し、中古車の販売強化に乗り出している。コロナ禍で人と人との接触を避ける傾向が強まる中、中古車のネット販売が日本の市場に根付くのか。トヨタの動きに関心が高まっている。

 8日にスタートしたのは「トヨタ中古車オンラインストア」。中古車のネット通販サイトは国内自動車メーカーとしては初めての取り組みだ。この新たな仕組みでトヨタが狙うのが、これまで系列ディーラーの中古車展示場では取り込めなかった低価格帯のユーザーだ。

 立ち上がりに掲載された約200台の中古車をみると、これまでもディーラーが得意としてきた初度登録から5年以内の高年式車両は全体の2割ほど。一方、同10年を超える低年式車は4割を占めている。18年12月から約10カ月にわたって一部の販売店で実施したトライアルでは、出品車両の2割が成約となり、このうち9割が新規客だった。来店せずに24時間いつでも気軽にアクセスできるネット販売は、これまでディーラーの中古車展示場には足が向かなかった層の開拓が期待できる。

 こうした中、異業種も中古車のネット販売に注目している。楽天は、中古車販売に特化した新たなECサイトを8月にオープンした。ネット通販サイト「楽天市場」では提供できなかった「走行距離」や「年式」などといった中古車特有の検索機能を盛り込み、車選びから納車までをすべてオンラインで完結できる仕組みを提供する。既存の中古車情報サイトと連携し、立ち上がりから10万台を超える掲載台数を確保。会員数1億ともいわれる「楽天経済圏」で中古車の販売に本腰を入れ始めた。

 ただ国内の自動車流通は、煩雑な登録制度や自動車に高い品質を求める国民性もあり、ECが根付いていない。経済産業省の調べによると、「自動車」「自動車二輪車」「パーツ」などを合わせた自動車関連の消費者向けEC化率は2・76%(18年)にとどまり、他の商材と比べても低いのが実情だ。

 実際、インターネット事業のエイチームがトヨタ系ディーラーの中古車を集めて19年1月スタートした中古車のネット通販サイト「リモビー」も、掲載台数が当初計画より増えなかったことで購入申し込み件数が伸び悩み、サービス開始から1年を待たずに撤退している。ネットによる自動車販売の難しさが浮き彫りとなった一例だ。新型コロナウイルスの感染拡大で消費者のライフスタイルや価値観が大きく変わる中、トヨタの取り組みは今後の中古車販売のあり方を占う試金石となりそうだ。