乗用車向けバッテリー ECO.R series(エコ.アール シリーズ)
自動車電池事業部 技術部 国内四輪グループ 平川グループマネージャー
自動車電池事業部 技術部 国内四輪グループ 春山リーダー

 自動車用鉛蓄電池の分野において国内第1位、世界第2位のシェアを誇るGSユアサが、乗用車向けバッテリー「ECO.R series(エコ.アール シリーズ)」で、日刊自動車新聞用品大賞2020のバッテリー部門賞を受賞した。新開発技術の採用と用途に適した専用設計により、優れた耐久性と充電受け入れ性、安全性を実現し、アイドリングストップ(ISS)車、ハイブリッド(HV)車、充電制御車やEN規格(欧州規格)搭載車など4シリーズで幅広いラインアップを揃える。企業理念として〝革新と成長″を掲げ、人と社会と地球環境に貢献していくことを目指すGSユアサのバッテリー開発は、電子化・高度化が進む車両と使用環境の変化に対応し進化を続けている。

環境配慮型高性能自動車バッテリー

―時代と共に進化させてきた環境配慮型自動車バッテリーとは
 平川「第一には、ISS車といった地球環境にも配慮した次世代車両に対応するバッテリーをいち早く開発し、提供してきたことがある。また本シリーズに限らず、環境保全の考えは企業理念としてあらゆる面で意識している。鉛蓄電池自体、再資源化可能なサスティナブルな側面を持っており、製品開発・製造においてもCO₂を極力出さないなど、常に環境への配慮を心がけてきた」

―シリーズ最上位に位置付けた「エコ.アール レボリューション」
 春山「国内初のISS車・通常車(充電制御車・従来車)兼用モデルである前身の『エコ.アール ロングライフ』から自動車の使われ方や性能も変わり、新技術によりさらなる長寿命化を実現したのが『エコ.アール レボリューション』だ。進化を続けるアイドリングストップ車への対応、チョイ乗りと称される短時間・短距離走行の広がり、カーナビゲーションシステムやドライブレコーダーといった車載電装品の増加、気候変動などによる環境の高温化など、バッテリーを取り巻く環境も大きく変化した」
「バッテリーの使用環境としてみると、充電時間はより短く、放電気味になり、一方で電気負荷は増大した。結果として、より厳しい環境下でのハイパフォーマンスが求められ、アイドリングストップ寿命とクイックチャージ性能の向上に力点をおいた製品改良を進めた。革新的なのは、活物質の軟化を抑制する正極活物質添加剤と負極側にもリブを形成し極板全体の反応を活性化する『デュアルリブセパレーター』の採用だ。バッテリーの劣化による電圧低下を抑え、寿命末期までISS車の燃費性能を引き出すことに成功した」

―2019年にJIS規格の製品ラインアップもリニューアルした
 春山「『エコ.アール ハイクラス/スタンダード』のコンセプトは、チョイ乗りなどの新しいカーライフ環境に合わせた改良だ。鉛蓄電池は100%の充電状態がベストコンディションといえるが、チョイ乗りはバッテリーの充電不足を招き、常態化するとサルフェーション現象でバッテリーが劣化し、回復もできなくなってしまう。そこで、負極活物質に新添加剤を加えることで耐サルフェーション性能を向上させ、短時間で回復するクイックチャージ性をより強化した」

―EN規格の日本車への対応も
 平川「『エコ.アール イー・エヌ・ジェイ』は、日本車専用のENタイプバッテリーだ。メーカーから求められたのは、EN規格を満たしながらも、日本車の乗り方に合わせた性能を持つことだった。短時間での充電回復を実現する高い充電受入性など、日本車用に開発してきた技術をEN規格に合わせ製品化するのは、簡単ではなかった」

常に最新の技術を投入し、自動車の進展を支えてきた

―次々投入される新技術の源は
 平川「完成車メーカーの要求に応えきる開発が大きい。メーカーとの開発におけるメリットは、プロジェクトに推進力が加わることだ。メーカーからの高い要求を決められた期間内にクリアしていくには、革新的なアイデアと実用化するための高い技術力が必要だが、当社はどちらも兼ね備えていると考えている」
「通常、新技術を生み出し製品化するまでには長い時間がかかる。基礎研究段階で50~100の試作が重ねられ、新技術として見出され市場に投入されるまでには、5~10年ほどかかるのが普通だ。当社では常にいくつもの研究が進んでおり、そのなかから市場ニーズに合う改良を実現しうる技術を採用し、製品化している。技術部まで上がってくる技術は、すでに基礎研究で実験を進め効果が見込めるとされた、実用性の高いものばかりだ。だからこそ、高品質な製品を継続的に提供できる」

―製品開発における苦労は
 春山「部署ごとに製品化までの道のりはさまざまな苦労があると思うが、技術部で初めて鉛蓄電池を製品化するプロジェクトに一から携わる経験をして感じたのは、関係部署の動きを把握し、連携していく難しさだ。より良い製品を生み出すため、開発スケジュールの調整など、常に関係部署とコミュニケーションを取りながら進めていかなければならない点に想定以上に苦労した」

―今後の展開について
 平川「具体的には言えないが、当社には市場にまだ投入されていない開発段階の革新的技術がたくさんあり、どれが先に実用化されてもおかしくない。人と社会と地球環境へ貢献できるよう、今後も確かな技術力をもって、優れた製品を生み出していく」