総会に向かう株主ら(トヨタ自動車提供)

 トヨタ自動車は11日、愛知県豊田市の本社で第116回定時株主総会を開き、取締役選任や定款の一部変更など3議案すべてが承認された。豊田章男社長はコロナ禍でも小幅な減益にとどまった前期業績について「この11年間の試行錯誤の結果だと考えている」と総括し「ご安心ください。トヨタは大丈夫です」と株主に語りかけた。

 豊田社長は総会の冒頭、社長就任時からの11年間を振り返り、組織や働き方、グループ事業の改革、アライアンス戦略などの取り組みを説明した後、「リーマンショック時に比べて200万台以上、損益分岐台数を下げることができた」と語った。また「取締役会で『ありがとう』と感謝の言葉を伝えた時、思わず涙がこぼれた」とも明かした。総会でも、コロナ禍に直面した社員が指示を待たずに即断実行で動いたと説明し「従業員にはずいぶんと厳しいことを言ってきたが、地道な努力を続けてくれた」と、涙で声を詰まらせる場面も。小林耕士取締役は中途入社後の豊田社長とともに働いたエピソードを紹介しつつ「大企業の社長というよりはベンチャービジネスの起業家という気がする。人づくりはまだ道半ばだが社長はおそらく諦めない。そのうち、社長の価値観なりを理解する人が増えてくる。それが今回の決算にもつながった」と語った。

 同業他社が今期の業績見通しの開示を見送る中、トヨタは連結販売台数を700万台(前期比21・9%減)、営業利益5千億円との見通しを示している。株主から理由を問われた豊田社長は「計画を出さないということは、われわれと仕事をしている仕入れ先などいろいろな方々が大変お悩みになると考え、ひとつの基準となる計画を出したのが本音だ。あくまでもひとつの基準で、社内には『最低、守らなければならない基準』と伝えている」と答えた。豊田社長は議案を諮る前、「大きな流れに逆らいながらも何とか前に進めたのは株主の皆さまのおかげだ」と謝意を示しつつ「世の中の人たちから頼りにされる企業のスタートポイントに立った。皆さまの元気の源(みなもと)になれるよう、グローバルトヨタ全員で頑張っていく」と決意を示した。

 総会ではこのほか、株主の質問に答える形で河合満執行役員(チーフものづくりオフィサー)が国内300万台維持へのこだわりを、白柳正義執行役員(調達本部長)がサプライヤー支援策を、佐藤康彦執行役員(国内販売事業本部長)が国内販社の現状をそれぞれ説明した。取締役候補のジェームス・カフナーシニアフェローはウーブンシティについて「未来に提供する製品やサービスをさらに魅力のあるものにしていきたい」と語った。

 コロナ感染防止のため来場見合わせやインターネット議決を呼びかけたこともあり、出席株主は361人(前回は5546人)にとどまった。質問は6人6問(同12人18問)、所要時間は1時間21分(同1時間49分)だった。

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 株主総会では、豊田章男社長が決算報道への感想を漏らす場面もあった。

 株主から「マスコミが『トヨタ(今期の営業利益)8割減』という報道をしている。どう思うか」と問われた豊田社長は「当日はいろいろな方から『よく予想を出しましたね』『感動しました』と言ってもらったが、次の日は『トヨタさん、大丈夫なの?』と言われてしまい、一晩明けた後の報道の力に悲しくなった」と振り返った。

 豊田社長はその上で「大切なことは情報を伝えることによって、何を実現したいのか、どういう世の中にしたいのかだと思う。ああいう発言をしたのは、皆さまに少しでも元気になっていただきたいと思ったから。株主の皆さまにはトヨタが幸せを量産できるかどうか見極めていただき、応援していただきたい」と締めくくった。