ビルや分譲マンションを手がける日鉄興和不動産は、MONET(モネ)テクノロジーズの配車プラットホームを活用してマンション住民向けMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)「フリクル」を2019年2月21日に「リビオシティ・ルネ葛西」(東京・江戸川区)で実証実験を開始すると発表した。「フリクル」はマンション専用オンデマンドモビリティサービスで、バスが利用者のスマートフォン(スマホ)アプリでの予約状況に応じて最適ルートを運行する。日鉄興和不動産は大規模マンションなどでの実用化を目指していく。

最近の都市部のマンションは、駅からの距離が重視される傾向が強いこともあって、地域内に公園や病院、公共施設などが点在し、マンション住民が近距離をマイカー以外で移動したいというニーズは強まっている。既存マンションの一部では、専用シャトルバスを導入しているケースもあるが、維持コストが高く、通勤時間帯に最寄り駅とのピストン運行が中心で、日中の稼働率が低い。

今回実証するサービスは、マンション住民がスマホアプリを使って域内にあるバス停に設定してある乗降場を設定して利用する。マイカーを持たない人も域内なら気軽に外出できるとしている。日鉄興和不動産は2019年6月に「MONETコンソーシアム」に加入、マンション向けMaaSとしてモネとともに取り組んできた。

実験に使用するバスは日野の小型バス「リエッセII」で、運転手を除いて26人が乗車可能。期間は6カ月~1年間を想定している。乗降場は駅や病院など、11カ所を設定しており、予約状況や利用者の希望到着時間などに応じて最適なルートを走行する。

運行システムはモネの配車プラットフォームとスマホアプリを採用した。。利用料は1回300円(朝のシャトル運行は200円)で、マンションラウンジカウンターで利用券を購入するか、「PayPay」によるキャッシュレス決済も可能。今回は1日平均200人の利用を見込んでいるが、赤字にしないためには300人程度の利用が必要という。

実験を実施する「リビオシティ・ルネ葛西」は439世帯の大型マンション。実験はマンションの管理組合から日鉄興和不動産に実験の事務局を委託する形をとる。乗降場などは、利用実績や利用者の要望から見直していく予定で「マンション住民が自らのモビリティとして運営してもらう」(モネの柴尾嘉秀副社長兼COO)という。

実証実験を通してオンデマンド運行による採算他の性を検証するとともに、小規模物件向けモビリティ導入の可否や、マンションでの運行に必要な機能や、最適なルートなど、システム上の課題を検証する。

また、日鉄興和不動産は今後、他のマンション物件への導入や、域内にある店舗に集客するためのクーポン配布や、買い物商品の宅配など、移動以外の機能を付加することも検討していく。