「部品性能は素材で大きく左右される」。車両の軽量化ニーズに加え、電動化による高性能電池向け素材ニーズ、自動運転化、コネクテッド化に伴う車載向け電線や電子回路基板の耐熱性・コンパクト化ニーズの高まりなど、次世代自動車向けの新たな高機能素材開発需要が急速に高まっている。今年は、第5世代移動通信システム(5G)向けビジネスが本格化し始めることもあり、高速通信向け素材市場の拡大も想定される。

 素材業界では、次世代車開発で求められる迅速かつ効率的な先行開発力を高めるために、自動車メーカーの開発情報を先取りすることを目的に海外などのティア1サプライヤーを買収して開発期間の短縮を狙う動きが近年相次いだ。部品サプライヤーとの素材の共同開発は従来から行われてきたものの、これだけではグローバル競争で取り残されるとの危機感の表れだ。

 このような経営判断が相次ぐ一方で、開発期間の飛躍的短縮を目的とする「マテリアル・インフォマティクス」に本格的に着手する動きが加速しつつある。デジタルの力を活用することで、新規材料の探索・設計期間を大幅に削減する手法で、化学メーカーや鉄鋼メーカーなどでマテリアル・インフォマティクスの本格導入に向けた人材育成に注力する動きが昨年頃から目立ち始めている。素材メーカーの存在感がさらに高まる1年となりそうだ。