新型カローラのDA。トヨタは今後、搭載車種を増やしていく方針だ

 トヨタ自動車が新型「カローラ」に初設定したディスプレイオーディオ(DA)がカーナビ業界を揺るがしている。市販ナビで主流のDIN規格商品に交換不可能な上、ナビ機能自体もスマートフォン(スマホ)を接続し、クラウドベースのナビアプリを利用するのが基本となるからだ。新型カローラシリーズで、これまで豊富に用意されていた純正カーナビ商品が消滅。サプライヤーにとっては納入ゼロになった格好だ。また、ディーラーにとっては用品売り上げの半分を占める主力商品がなくなるだけに、新車付帯収益の減少につながる可能性もある。

 トヨタが新型カローラシリーズでDAの標準搭載に踏み切った背景には、「カローラアクシオの純正ナビ装着比率は4割。法人需要が多く市販商品に流れていた」(純正用品担当者)という実態がある。今回、市販ナビに交換できないDAを採用することで、純正品で需要を囲い込む狙いだ。

 DAを採用したことでカーナビの概念が大きく変わった。従来は地図データを格納したDINサイズのカーナビ(筐体)を装着することでナビ機能が使えたわけだが、DAではスマホを接続してナビアプリを使用することになる。

 このため、新型カローラでも複数のナビアプリが使えるようになった。標準状態ではスマホアプリをカーナビなどの車載装備で使えるようにするオープンソースプラットフォーム規格「スマートデバイスリンク」によって、LINEナビなどが使用できる。

 また、メーカーオプション(TV視聴とのセットで3万3千円、10%消費税込み)で、アップルカープレイ、アンドロイドオートに対応しており、iPhoneのマップアプリ、グーグルマップも使用できる環境になっている。

 高齢者比率が高いカローラユーザーが使えるのか―。その懸念を払拭するため、これまでのカーナビ同様に使えるディーラーオプションも2種類(エントリーナビキット・6万6千円、Tコネクトナビキット・11万円)用意した。

 事前受注では懸念払拭策が奏功した格好だ。セダンでは7割のユーザーがディーラーオプションのナビソフトを選択。逆に、スポーツは6割以上がナビアプリを選んだ。ただ「初期段階は既存ユーザーからの代替がメーンとなるため7割がナビソフトだったが、新規需要が入ってくる今後は構成比が変わる可能性も大きい」と見ている。

 一方、DAの採用により「ディーラーや部品共販から懸念の声が多く上がった」のも事実。用品売り上げの大黒柱を失うだけに、トヨタの純正用品部隊も頭を悩ませたという。

 ナビメーカーの危機感はさらに強い。DA搭載車が増加すればディーラーオプションとして採用されるOE商品がなくなり、アフターマーケットでは市販品に交換できないため、将来的に市販カーナビ市場が大きくシュリンクする可能性も秘めている。

 「保有車両に対する商売が大きい分野」(大手ナビメーカー広報担当者)であることも事実だが、「市販カーナビメーカーにとっては苦しい市場環境に突入する」(大手カー用品店バイヤー)との見方も少なくない。

 ディーラーにとっても収益減につながる可能性もある。用品売り上げの半分をカーナビが占めているからだ。もちろん、トヨタも認識しており対応策を打ってきた。メーカー、ディーラーそれぞれのナビオプションで収益化を図るほか、「新機軸の商品、セット商品を展開し数量を稼いで補完する」(用品担当者)考えだ。

 新機軸商品の一つがフロントウインドウの霜をすばやく取り除くことができる「霜取りウォッシャー」。ウォッシャー液を加熱、保温する装置で、降雪地はもとより、冬場の運転前作業を軽減する用品として販促を進めていくという。

 セット商品の提案も始めた。サイドバイザーやフロアマットなどをセットにした「ベーシックセット」、霜取りウォッシャーとリモートスターターを組み合わせた「スタートアシストセット」などを用意。割安なセット価格を設定することで、販売数量を増やし、カーナビの落ち込み分をカバーする狙いだ。

 こうした対策を進めることで、新型車の台当たり用品売上は「従来同等、それ以上に設定できている」という。

 トヨタは「全面改良やマイナーチェンジなどのタイミングでDAの採用を進める。一般的なナビは新型では減ってくる」と話す。すでにDAを搭載しているマツダも含め、今後他メーカーにも広がれば、市販カーナビ市場に与えるインパクトは決して小さくないと見られる。

(水町 友洋)