日産自動車が事業改革の推進を加速する。グローバルでの自動車生産能力を2018年度の720万台から2022年度までに660万台にまで削減し、2022年度までに人員を4800人削減する計画も工場の直接員を中心に1万2500人削減する。商品ラインナップも見直し、小型車やダットサンなど、不採算モデルの販売を取り止める。収益が悪化している米国事業の立て直しに向けてはフリートを抑えて小売りの比率を大幅に高めて在庫を削減する。自動運転や電動化など、将来の競争力を左右する分野の研究開発投資は増やす一方で、余剰生産能力と人員を削減して収益力を高める。身の丈にあった経営体制に再構築し、2022年度に年間販売600万台で営業利益率6%を確保できる収益力のある自動車メーカーを目指す。
7月25日発表した2019年4-6月期連結決算は営業利益が前年同期比98.5%減の16億円と、ほぼ収支トントンに近いレベルの減益となった。米国での在庫削減やインセンティブの抑制など、販売正常化に向けた取り組みを本格化した影響などから、販売台数が落ち込み、販売活動だけで605億円の減益要因があった。
期中の新車販売は、北米、日本、欧州が不振で、同6.0%減の123万1000台と低迷した。西川廣人CEOは「非常に厳しい結果となったが、在庫は着実に減っており、販売正常化は進んでいる。第1四半期は1番厳しい業績を予想していたが、小売り台数はやや想定を下回ったものの、第2四半期以降、挽回できるレベル」と述べ、通期業績見通しは据え置いた。
足元の業績は厳しいことから事業改革を急ぐ。生産能力を60万台減らして、工場の稼働率を2018年度の69%から86%にまで引き上げる。このため、グローバルで工場のラインの停止や、工場の稼働停止にも踏み切る。2019年度までにインドネシアやスペインなど、8拠点で生産能力を削減する計画に加え、追加で2020年度から2022年度までに6拠点でも生産能力を削減する。これに伴う人員削減規模は2019年度までが6400人、2020年度から2022年度までが6100人で、合計1万2500人と、グローバルでの従業員数の約1割削減して固定費を削減する。
商品ラインナップも見直す。販売が低迷して不採算となっている小型車やダットサン車の生産・販売を取り止める。商品ラインナップをモデル数全体で10%削減する。
また、収益悪化の原因となっている米国事業の立て直しを本格化する。収益の低いフリートを抑えて、小売り販売台数を増やしながらも「販売やシェアを極端に増やすことは考えていない」(西川CEO)。小売り台数を年間10万台増やして、2%にまで落ち込んでいる米国事業の営業利益率を6%にまで改善させる意向だ。このうち、小売りを増やすことで4ポイント改善し、車両製造コストの上昇分を固定費削減で吸収する計画だ。
一方、業績不振に関しての経営責任について西川CEOは「できるだけ早い段階で指名委員会で議論してもらって次世代がマネジメントできるようにしていきたい」と述べた。ただ「売上高14兆5000億円、営業利益率6%には責任がある。2022年度以降(の経営計画)は、次世代の経営陣に考えてもらう」と、早期のトップ交代を否定した。