国土交通省の石原大物流・自動車局長は、日刊自動車新聞などの取材にこのほど応じ、相次ぐ不具合で同省が点検指示を出しているEVモーターズ・ジャパン(佐藤裕之社長、北九州市若松区)に関し「結果次第では、指導を含めた対応を考える必要がある」と語った。点検対象の電気自動車(EV)バスは国の「商用車等の電動化促進事業」として導入費用の一部に補助金が出ている。環境省担当者は「補助金の返還を求める可能性もある」と話した。
今回、不具合が見つかり、国交省が道路運送車両法に基づく点検指示を出したEVバスは、中国の新興バスメーカー3社が生産し、EVモーターズ・ジャパンが輸入販売している。
閉幕が迫った「大阪・関西万博」でも、大阪メトロが運行する「e―Mover(e―ムーバー)」として該当車両が採用された。会場の外周路を運行しており「レベル2」(高度な運転支援)と「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)を組み合わせ、磁気マーカーやスマートポールなどを活用した自動運転車両だ。自動運転機能は東京大学発のスタートアップ、先進モビリティ(瀬川雅也社長、茨城県つくば市)が担った。
e―ムーバーは万博開幕直後の4月末、回送中の車両が待機場で停止した際、パーキングブレーキが作動せず、コンクリート壁に衝突する事故を起こした。EVモーターズ・ジャパンによると、エラー発生時にリセット処理するプログラムの通信速度設定に誤りがあり、リセット処理が完了しなかったことが原因だという。この事故を受け、同ルートでの自動運転が取りやめになった。
EVモーターズ・ジャパンは事故発生当時、「自動運転システムの問題で車両側の不具合ではない」と説明した。ただ、国交省によると、ドアの開閉不良や走行中の緊急停止など、車両側の不具合も報告されているという。
4月には、福岡県筑後市でスクールバスとして導入されたEVモーターズ・ジャパンのEVバス4台でも不具合が見つかり、現在まで運行を見合わせたままだ。
こうした状況も踏まえ、中野洋昌国交相は9月3日、EVモーターズ・ジャパンに対し、万博輸送に使用するバス以外も含め、車両全般を総点検するよう指示した。合わせて、車両の委託製造先である中国メーカー3社における品質管理体制の見直しも求めた。総点検は、道路運送車両法に基づく行政指導だ。
総点検の対象は317台で、国による型式指定は受けていない。国交省の担当者は「(メーカーは)人海戦術的に1台1台不具合を確認していくことになる。必要に応じて部品交換などを行ってもらい、早期に安全性を確認する必要がある」と話す。
石原物流・自動車局長は「(総点検は)時間をかけずにやる必要がある。(該当車両の)安全性が確認されているから(車両)登録されているのだが、残念ながらあちこちで不具合生じているのは事実であり、構造上の問題ということも考えられなくはない。総点検の結果次第では、場合によっては指導を含めた対応を考えなければいけない」と語った。
このEVバスは、導入費用の一部を国が補助している。2024年補正予算では、事業予算として約400億円が計上された。環境省の担当者は「車両に不具合が発生したとしても、その段階で補助金の返還を求めることはない。ただ、事業の目的は走行中の商用車の二酸化炭素(CO2)排出量を削減すること。車両の走行距離が少なく、全く走らないということであれば、補助金の返還を求める可能性もある」と話す。補助金の執行団体である日本自動車輸送技術協会も、同社のEVバスの補助金申請を検討している企業にウェブサイト上で注意を呼び掛けている。
(2025/10/9 修正)


















