自動車メーカー・サプライヤー、半導体の調達に奔走 旧世代品生産打ち切りも安定確保に取り組む

  • 自動車メーカー, 自動車部品・素材・サプライヤー
  • 2025年10月2日

 自動車メーカーや部品メーカーが半導体の調達に奔走している。電動化や知能化で調達量が増えているとは言え、半導体市場全体からみると車載用は数量ベースで1割ほどに過ぎず、品質が安定した旧世代品が調達の中心だ。こうした「旧世代(レガシー)半導体」の生産に半導体メーカー各社が力を入れることはなく、逆に先端半導体を量産するため、生産を打ち切る例が増え始めた。このままでは車両の生産に支障が出かねないため、安定して半導体を調達しようと自動車業界でも対策を練り始めた。

 電装系の部品メーカーによると、複数の半導体メーカーから調達しているレガシー半導体について、相次いで供給期限を通達されているという。

 自動運転や先進運転支援システム(ADAS)用は例外として、他の多くの車載電子制御ユニット(ECU)には、回路線幅が40ナノメートル(1ナノは10億分の1)以上の旧世代品が多い。そもそも先端半導体ほどの性能が求められない上、性能が安定しており、コストが安いからだ。車載用はいったん採用されると補修用も含めて、10年近く取引する。長期取引は本来、利点のはずだが、世代交代が頻繁な半導体メーカーからは嫌われることも多い。コロナ禍で自動車生産が滞ったのも、半導体メーカーが発注の途切れた車載用より、巣ごもり需要で膨らんだゲーム機器やスマートフォン向けの先端半導体の生産を優先させたためとされる。

 今はレガシー半導体の供給不足は解消したが、自動車メーカーや部品メーカーが在庫を増やしたことで価格競争が激化。レガシー半導体事業の収益は悪化しているという。一方で、データセンターや人工知能(AI)向けに回路線幅が1桁台の先端半導体の需要が拡大。半導体メーカーは、こうした需要に応えようと、収益性の低いレガシー半導体の生産打ち切りに動いているというわけだ。

 半導体メーカーから生産終了の通告を受けたある部品メーカーは、納入先に部品供給への影響を伝え、対応策の検討に入った。生産停止を予定する半導体を採用しているモデルやグレードの廃止、半導体調達先の変更などのほか、搭載する半導体の世代変更なども模索する。ただ、調達する半導体の世代を新しくすると設計変更を含めコストアップにつながるため「簡単に変更できない」という。

 電動化、知能化の進展とともに車載半導体の重要度が高まる中、自動車メーカーは半導体の進化を想定した新車開発や、安定調達への取り組みなどが求められそうだ。

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