トヨタがこだわる自動運転技術の内製化 独自AIで安全とセキュリティー確保 世界市場狙う中国勢に対抗

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  • 2026年9月15日 05:00

トヨタ自動車が自動運転車の導入時期を明らかにした。自動運転の認識や判断を人工知能(AI)に任せる「エンド・ツー・エンド(E2E)」のシステムを自社開発し、乗用車向けは2028年、商用車向けは30年までに導入する。競合メーカーに対しやや後れを取る格好だが、トヨタが導入時期より重視するのが交通事故ゼロと情報セキュリティーの双方で高度な安全性を確保することだ。内製にこだわる背景には、圧倒的なスケールとスピードで自動運転車を投入し、世界市場の開拓を狙う中国勢の存在がある。

自動運転は、AI技術の急速な進展によってシステムの高度化が加速している。特に進化が速いのが、単一のAIが認知・判断・操作を担うE2Eだ。同技術を活用することで一般道も含めて運転者の関与をほぼ必要としない自動運転「レベル2++(プラスプラス)」(高度運転支援)は、米電気自動車(EV)大手のテスラのほか、中国新興メーカーが先行している。

矢野経済研究所によると、25年の自動運転システムの新車搭載台数は世界で6825万台だった。このうち一般的な運転支援システムの「レベル1」および「レベル2」が全体の84.6%を占める。高速道路上での高度運転支援を実現する「レベル2+(プラス)」と一般道での高度運転支援を可能とするレベル2++は15.4%だった。同研究所は、システムの高度化とコスト低減によりレベル2+/2++は高級車から普及価格帯にも導入が進み、30年に約2.6倍、35年には4倍に拡大すると予測する。

E2Eの開発競争を巡っては、テック企業が基盤モデルを開発し、自動車メーカーが採用する水平分業の動きが広がっている。E2Eの精度向上には膨大な計算量と巨額のコストが必要で、自動車メーカーはテック企業が持つ基盤モデルを活用した方が合理的だからだ。日産自動車は英ウェイブ・テクノロジーズの技術を活用し、次世代「プロパイロット」を27年度に国内投入する。E2E先進国の中国では、トヨタや日産が現地スタートアップのモメンタと手を組み、レベル2++を実装している。

E2Eは技術を競う状況から、テック企業と協力し実装スピードを競うフェーズに移行している。それでもトヨタがE2Eの内製化にこだわるのは、データセキュリティーを重視するためだ。自動運転車は、車載カメラから取得した膨大なリアルタイムの画像データを活用する。ある自動車メーカーの首脳は「極論すれば誰がどこで何をしているかカメラに写ってしまう」と警戒し、例えば中国製のシステムを搭載した自動運転車が国内の道路を走行することについて安全保障上の懸念を抱く。実際、中国では日本を含む海外メーカーの自動運転車は走行できないという。トヨタのAIシステムはあくまで国産にこだわる。

内製化するもう一つの理由が、事故が起きたときの説明性を担保することだ。トヨタのE2Eは、アルゴリズム(計算手順)による「ルールベース」を組み合わせたハイブリッド構成とし、AIが想定外の判断や操作をした場合にルールベースのシステムが「ガードレール」として介入する。ルールベースを組み合わせることで、事故原因が特定できないときの「ブラックボックス問題」に対応する。

トヨタの皿田明弘デジタルソフト開発センター長は「現在の事故の多くは車単体で防げないものがある」と述べ、E2Eで車両の安全性能が進化しても交通事故を防げる範囲は約6割にとどまると指摘する。車と人、交通インフラが協調する「三位一体」の取り組みも同時に進め、自動運転技術の最終的な目的である「交通事故ゼロ」の達成を目指す。

中国はE2Eによる自律型のみならず、インフラ協調型の「車・路(道)・雲(クラウド)一体化」プロジェクトを約20の都市で進めている。中国政府はインフラ協調型の自動運転システムをアジアなどに輸出する狙いがあるとみられる。中国勢の自動運転車の普及がアジアで進めば、日本メーカーの牙城が揺らぎかねない。

国内に目を向けると、地方の交通インフラの維持や高齢者の移動手段の確保などの社会課題に直面している。自動運転技術は導入時期を競い合うのではなく、安全性と国際競争力を確立するための「競争」と「協調」の領域を早期に見極め、国内の自動車メーカーが連携を深めて中国勢に対抗していく必要がある。

(編集委員・福井 友則)

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