三菱自動車は、「パジェロ」をはじめ独自色の強いモデル展開で収益力向上を目指す。同社はこれまでも「三菱自らしさ」を掲げ、SUVやピックアップトラックなど特徴的な商品を段階的に投入し、ブランド復権を図ってきた。ただ、2025年度までの中計経営計画では、米国関税など外部環境の変化で収益、販売台数目標ともに未達となった。26年度以降の新中計も前中計の数値目標を下回る実質的な“下方修正”となる。不確実性が高まる中、同社が強みを出せる商品と地域にリソースを集中投下し、年間販売100万台以下の「スモールプレイヤー」として生き残りを模索する。
■パジェロ「兄弟」で復活
「三菱自動車らしさの価値について、従来の『環境×安全・安心・快適』だったが、今回はより商品価値として定義する」。加藤隆雄最高経営責任者(CEO)はこう強調した。 強みを持つ領域に経営資源を集中する戦略で、ブランド価値を高める。
その起点となるのが、26年度内に国内投入する「パジェロ」だ。1990年代のRVブームをけん引し、悪路走破性やラリーイメージとともに、三菱自ブランドを支えた象徴的なモデルだった。国内生産終了から約7年を経て復活するだけでなく、シリーズ化も打ち出す。過去には小型車「パジェロイオ」、軽自動車「パジェロミニ」を展開し、“パジェロ三兄弟”として人気を集めた。単一車種ではなくブランドとして育成することで、収益性の高いSUV市場で存在感を高めていく。
こうした戦略は「デリカシリーズ」ですでに一定の成果を上げている。「デリカD:5」と軽「デリカミニ」は、アウトドアやレジャー志向のユーザーや、女性など新規顧客獲得につなげた。パジェロのシリーズ化には、デリカで得た成功を横展開する狙いもありそうだ。
■量より質を重視
新中計では、販売台数よりも収益性を重視する。25年度の台当たり売上高は約300万円で、デリカシリーズや「アウトランダー」、「トライトン」といった三菱自らしさを体現した高価格帯モデル(アセアン戦略車を除く)の販売比率は約5割を占める。
今後6年間では、パジェロを含め13車種を投入する。31年度には台当たり売上高を約350万円へ引き上げ、高価格帯モデル比率も6割超を目指す。高付加価値モデルを増やし、ブランド力と収益力を同時に高める戦略だ。
そのため、単に新型車を投入するだけではなく、パジェロの投入に合わせて「ハイブランド旗艦店」を展開する計画も盛り込んだ。高価格帯モデルに見合う販売空間や顧客体験を整え、ブランド価値を引き上げる。販売現場も含めて三菱自らしさを演出し、差別化を図る考えだ。
■地域戦略から「国戦略」へ
販売戦略も見直した。従来は地域単位で戦略を展開してきたが、今後は市場特性に応じた「国別戦略」に転換する。日本、フィリピン、ベトナムを重点国、中東や中南米、インドネシアを育成国、豪州、タイ、米国を再建国と位置付け、それぞれに合わせた商品・販売戦略を進める。
29年度には営業利益1600億円、営業利益率4.5%、世界販売90万台を目指す。前中計目標値である営業利益2200億円、営業利益率7%、世界販売110万台を下回る。今中計を達成することで、長期的な成長を目指す盤石な経営基盤を構築できるかが問われそうだ。
(2026/6/2修正)





















