ホンダが「儲からない」中古車ビジネスを刷新する理由 グループ力を結集して専業者に対抗

  • 中古車流通, 自動車メーカー
  • 2019年8月6日

「自動車メーカーは新車が売れると儲かるし、アフターサービスが増えると部品販売で収益が得られる。中古車が売れても自動車メーカーには実入りがないので(中古車事業の)優先順位は低かった」(岩崎則彦ホンダ日本本部販売部部長)―ホンダは8月6日、国内中古車事業を刷新すると発表した。位置付けが不明確だった認定中古車制度を見直すとともに、中古車販売店のデザインを変更、中古車に関する情報をホンダと系列ディーラーで共有するシステムも構築して、大手中古車専業者に対抗する。

ホンダによると、ホンダの中古車が国内で年間48万台発生しており、このうち、23万台は他社の系列ディーラーの下取り車などに流れて、ホンダグループには手が出せない。残りの25万台のうち、ホンダ販売会社が下取りしているのは6万台にとどまり、5万台を中古車専売店が買い取っている。14万台はホンダ販売店に下取りしても、在庫過多によってオートオークション(AA)などに出品されている。ホンダグループが手の内化できているのは12%にとどまる。新車市場の成長が見込めない中で、ホンダでは販売会社にとって貴重な収益源になる可能性のある中古車事業を立て直す。

中古車事業の刷新に向けて認定中古車制度を見直す。従来は他銘柄の中古車や修復歴のある中古車でも、一定の基準をクリアした車両はすべてホンダ認定中古車としていた。「選ばれた特別な車両」とするため、認定中古車ブランドを「U-Select」とし、ホンダ車で修復歴なし、第三者機関が評価した「車両状態証明書」を必須条件とする。中でも上質な認定中古車と位置付ける「U-Selectプレミアム」は年式5年未満、走行距離5万km未満、評価点4点以上の中古車で、無料保証2年(通常は1年)を付与する。

中古車販売店のデザインも変更する。従来、専売店は「ホンダオートテラス」、新車併売店「オートテラスコーナー」を展開していたが店舗名を「ホンダカーズ○○ U-Select○○」(○○は地名)店とし、「緑」を採用したオーテラスのイメージカラーを、ホンダ・カーズ販売店と同じ「白」を基調としたものに変更する。店舗のサイン変更は2019年10月から2020年3月末までの間に実施する。

また、ホンダグループの中古車事業に新しいシステムを導入して、全国の中古車販売店をネットワーク化する。従来、販売店ごとに管理していた在庫情報、査定価格などの中古車に関するデータを集約して、これを分析したものを販売店にフィードバックする。これによって競争力の高い中古車下取り価格を提示して、買取専売店に対抗する。さらに、販売会社が在庫過多となって従来であればAAに出品して処理していた中古車については、「共有在庫」にしてグループ力を活用して小売りを促進し、AAなどの外部への流出を防ぐ構え。自動車メーカーがグループ全体で中古車の在庫を共有するのは初めてという。

ホンダによると、新車の収益は、自動車メーカーと系列販売店で92%を確保できているのに対して、中古車では40%にとどまり、多くが大手中古車専業者の収益となっている。国内新車市場の大きな成長が見込めない中、ホンダでは、これまで手薄だった中古車事業も、販売会社の重要な収益になると判断。特に自動車メーカーの中古車の手の内化は、ブランドイメージの向上や、下取り価格の引き上げに結びついて、新車販売の促進にも結びつくことから、中古車事業の立て直しにやっと重い腰を上げる。ただ、全国にネットワークを広げ、規模や収益力で定評のある中古車専業者に対抗できるかは予断を許さない。

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