ダイハツ工業は7月9日、軽乗用車「タント」を約6年ぶりにフルモデルチェンジして同日から販売開始した。4代目となる新型タントは、新しいプラットフォームなどで構成する「DNGA」(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用した最初のモデルで、スーパーハイト軽自動車に求められるさまざまなニーズに対応したとしている。また、ダイハツとして初めて開発の初期段階から標準車と福祉車両を一体で開発、健康な人から介護が必要な人まで、多くの高齢者にシームレスな商品を品揃えする。
ダイハツの奥平総一郎社長は「新時代のライフパートナーで、先進技術も搭載し、デザインまで進化させた良品廉価の1台になった」と述べ、販売拡大に自信を示した。
DNGAは、サスペンションや骨格の部品配置をゼロベースで再構築し、次の10年間を見据えたアーキテクチャーで、今後の電動化や自動運転などに向けた土台となる。ダイハツでは今後投入する軽自動車、小型車にDNGAを採用し、ラインナップを刷新していく計画だ。
DNGAの採用で新型タントは、操縦安定性、乗り心地を大幅に改善したほか、衝突安全性能、NV性能、ボディ強度も向上した。曲げ剛性を先代と比べて約3割向上するとともに、ハイテン材の活用などで、プラットフォームを含むボディ骨格全体で約40kg軽量化した。基本性能の向上で急ハンドルでも安定して走行できる。運転で疲労につながる視線のブレを低減する。
新型車は助手席側のピラー(柱)をドアに内蔵する「ピラーインドア」を継続したのに加え、運転席を最大540mmスライド可能とし、運転席と後席間の移動や、助手席側から運転席への乗り降りする利便性の向上を図った。停車して運転席に座ったまま後席の子どもの世話も可能。
助手席の半ドア時、自動でドアを閉じる助手席イージークローザーや、パワースライドドアが閉まる前にドアロックを予約できるタッチ&ゴー機能、予め設定することでクルマに近づくだけでスライドドアが自動で開くウェルカムオープン機能など、軽自動車初の便利機能を採用した。
予防安全機能「スマートアシスト」を拡充した。新たに車線からはみ出す可能性がある場合、ステアリング操作をアシストする車線逸脱抑制制御機能や、対向車を検知すると自動でヘッドランプの照射を遮光するアダプティブドライビングビーム(ADB)、標識認識機能、ブレーキ制御付誤発進抑制機能(前方・後方)を追加した。
また、メーカーオプションの運転支援機能「スマートアシストプラス」では、全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)、車線中央を走行するようステアリング操作を支援するレーンキープコントロール(LKC)などを追加した。
軽自動車初となる「スマートパノラマパーキングアシスト」は、駐車する際、カメラが白線を検知して音声と画面でステアリングをアシストする。
エンジンは改良、EGR(排出ガス再循環装置)の吸入量に応じて複数回点火するマルチパークを採用、燃料噴射方法もスワール噴射を採用することで、燃焼効率を向上した。CVT(無段変速機)は、スプリットギヤを組み込み「ベルト+ギア」駆動とし、エンジン回転の伝達効率が上がった。変速比幅をロー側、ハイ側ともに広げて従来の5.3から7.3となった。
一方、ダイハツの新型タントの開発では高齢者対応を本格化するため、標準車と福祉車両の「垣根をなくす」をコンセプトに、開発初期段階から標準車と福祉車両を一体開発、「ウェルカムシートリフト」など、福祉車両を拡充するとともに、標準車にも高齢者に便利な装備を設定した。具体的には「ラクスマグリップ(助手席・運転席/助手席シートバック)」と「ミラクルオープンステップ」をオプション設定するとともに、福祉車両も使い勝手の向上とコスト低減を図った。
先代タントのユーザーはシニア世代が全体の半分弱を占めている。標準車は乗り降りしにくいが、福祉車両には抵抗があるシニア向けに、新商品・新装備でカバーする。
新型タントの価格は122万0400~168万4800円、タント・カスタムが154万9800~187万3800円。
月販計画は1万2500台。同社ではすでに1万6000台と、想定していたより1.5倍以上の予約注目を獲得した。
























