日産自動車は10月29日、「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」で大型ミニバンの新型「エルグランド」を初披露した。2026年夏の発売を予定しており、フルモデルチェンジは16年ぶり。国内向け旗艦モデルとして経営再建とブランドイメージを立て直す重要な役割を担う。

デザインはリニアモーターカーから着想を得て、先進性やスピード感、快適性を表現した。2023年のJMSで披露した「ニッサンハイパーツアラー」の意匠も多数盛り込んだ。

パワートレインは、最新のシリーズハイブリッドシステム「第3世代eパワー」のみとした。今年から欧州市場に投入されており、国内モデルでの採用は初めて。発電専用の1.5リットル3気筒ターボエンジンと、モーターやインバーターなどを「5イン1」化した駆動ユニットを組み合わせ、高速燃費は15%改善。静粛性も高めた。

運転の楽しさも意識して開発し、競合車との差別化を図る。eパワーと電動四輪駆動システム「eフォース」、電子制御サスペンションを統合制御することで、道路の継ぎ目やワインディング走行でも車体姿勢を維持する。プラットフォームも現行型をベースに大幅に改良して刷新した。ドライブモードも雪上などを含めて6モードを搭載予定だ。

1997年に登場した初代は国内高級ミニバン市場を開拓して一斉を風靡したものの、現行型の今年1~9月の販売台数は1275台と低迷。市場ではトヨタ自動車「アルファード」「ヴェルファイア」が席巻しており、ユーザーや販売店からは新型を待ち望む声が寄せられていた。

出力など諸元値は公表していないものの、価格は「他社のハイブリッド車と比べたときの目線で」(開発担当者)検討していくという。

日産の今年1~9月の世界販売台数は、昨年同期比4.0%減だった。特に国内は同13.9%減の31万8097台と厳しい状況だ。昨年からの経営問題で傷んだブランドイメージを復権し、事業再建につなげるけん引役として、JMSでも一際注目されそうだ。