今年も富士スピードウェイで開催した「マツダファンフェスタ2025」
「マツダスピリットレーシングロードスター」の乗り込み体験は常に列ができていた
開会セレモニーでは「RX―7」に乗って登場した寺田氏や毛籠社長が挨拶した
今年度、初導入されたネクスコ東日本の「CX-80」高速道路パトロールカーも注目を集めた

 マツダは今年で5回目となる「マツダファンフェスタ2025」を4、5日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開いた。厳しい事業環境下でも「ファンともっとクルマを楽しむ場」をテーマに、クルマの魅力を再発見できるコンテンツを多数実施した。ロータリーエンジンの分解や脱炭素化技術の体験といったマツダならではの催しを、約2万1千人の来場者が楽しんだ。

 開催は5年目で、今年もマツダや関係会社のほか、全国の販売会社、アフターパーツメーカーなどが出展。子どもからシニア、女性まで幅広い層が楽しむ様子があちらこちらで見られた。

 マツダが関わった約60のコンテンツは社員が自ら企画した。挙手制で集まって選ばれた約300人が各コーナーの運営まで実施。普段、接客とは無縁の開発エンジニアなども来場者との交流を楽しんだ。

 マツダが関わったコンテンツのうち、4割近くは今回新たに実施したものだ。毎年楽しんでもらえるよう、刷新しているという。また、今年からサーキットの近隣小学校にも告知し、地域連携を深める取り組みも始めた。

 同社が力を入れる環境対応技術では、ラジコンカーを使った二酸化炭素(CO2)回収技術の体験や、リサイクル材からミニカーを作る企画など、親子で親しんで理解を深められるように趣向を凝らした。

 販売会社も地域色を出したブースを出展。静岡マツダ(日置輝明社長、静岡市駿河区)は社員が茶摘みの衣装で出迎え、本皮キーホルダーの工作体験などを実施するなど、賑わいを見せていた。日置社長は「販社のイベントはファンイベントではなくどうしても販売が目的になってしまう。来場者に喜んでもらい、従業員にもお客さんの笑顔を見てもらいたい」と意義を語った。

 限定車「マツダスピリットレーシングロードスター」も正式発表したほか、1991年のルマン24時間耐久レースを制した「787B」など、レーシングカーのデモランも会場を盛り上げた。4日は雨天のため787Bの走行は中止となったが、ガレージ内でエンジンを始動させると車体が見えないほどの人だかりができ、独特の高音と迫力に歓声が上がっていた。

 マツダ車でルマン挑戦を続け、優勝の立役者となった〝ミスタールマン〟こと寺田陽次郎さんの「レーシングドライバー60年を祝う会」も開かれた。毛籠勝弘社長が祝辞を述べ、バイオリニストの古澤巌さんがサプライズ演奏を披露。会場に集まったファンが拍手を送っていた。

 米国の追加関税を筆頭にマツダの事業環境は厳しく、11月に予定していた岡山県でのファンフェスタの開催は見送られた。それでも運営責任者を務めたブランド体験推進本部、藤本恵利本部長は「クルマ本来の楽しさに立ち返るイベントを大事にしていきたい。ファンと一緒に楽しむ場を大事に思う社員が多い」と意義を話す。

 クルマに関する催しは数多くあっても、技術や歴史、世界観まで多角的に楽しめる場は少ない。さらに1企業が毎年、国際格式のサーキットで開催しているケースは他に例がない。中堅メーカーにとってファンは自社を支える重要な基盤だ。ユーザーとの距離感の近さや手作り感、温かみが来場者を楽しませている。

(中村 俊甫)