自動車販売店に入社したきっかけは? このような質問に新入社員は「昔からクルマが好きだった」「アルバイトで接客業を長くやっていて、人とコミュニケーションを取ることが得意だから」など、ポジティブな気持ちからだったと答える若者が多い。実に良いことです。

しかし、実際入社してみると、覚える仕事は多く、整備の受け入れや電話対応一つとっても緊張してしまいます。入社して数カ月、些細なミスで上司やお客さまから厳しい指摘を受けた人もいるでしょう。そのような出来事が若者の不安を生み「自分は役に立てていない」「この仕事に向いていない」と感じてしまっている人が多いことも事実です。

でも、入社直後から仕事に自信を持てる人の方がマイノリティーです。大事なことは、入社して間もない新入社員は仕事を完璧にこなすことよりも、まずは自分から学びにいく姿勢が重要です。

思い返して下さい。学生時代までは、お金を払うことで教育が受けられ、そこで知識を身に付けてきました。お金を払い「教えてもらう」ことが前提であって、誰かがフォローしてくれる環境が整っていました。

社会人になれば、その環境はガラっと変わります。今度はお金を払う立場から、お金をもらう立場になります。前提が「教えてもらう」から「自分の行動や時間を、会社や顧客のために役立てる」に変わります。学生から社会人になっても「分からないことは誰かが当然のように教えてくれる」「自分が分かるまで誰かがとことん付き合ってくれる」などと学生気分が抜けていないと、入社前に抱いた〝理想〟と入社後の〝現実〟とのギャップに悩まされてしまいます。

当然ですが、何かをやり始めた当初は誰もが初心者です。最初から会社の即戦力になれることの方が少ないです。ただ、新人だからといって教えてもらって当然!と思うのではなく、自分から教わりにいったことを「今後にどう生かすのか」「どう価値に変えるのか」というように、意識を改革するようにしましょう。つまり、「受け身」から「自発」に意識転換するということです。

上司や先輩に指示されたことをただやるのではなく、指示されたことが何のための行動なのか、どうすればもっと価値を提供できるようになるのか。このように考える姿勢が、社会人としての成長カーブに大きく影響します。

「社会人」とはどのような意味を持つのでしょうか。それは「自分の周囲の人の役に立つことで対価を得る人」なのです。皆さんの行動が誰かの満足、感動に変わります。自動車販売は、それを大きく実感できる魅力的な仕事です。

これからの長い社会人生活の中で、一番成長のスピードが速い時期が新入社員の期間です。入社してから半年、一年後には見違えるような成長を遂げます。しかし、この成長スピードは自分からどれだけ学びにいくのか、その意識によって大きく変わります。だからこそ、入社して間もない今は、教えてもらう立場から、価値を提供する立場へと意識を転換する大事な時期となるのです。成長スピードをどんどん加速させるためにも、自分から自発的に行動を起こすようにしていきましょう。

 

文:株式会社プログレス 江原忠宏

〈プロフィル〉えはら・ただひろ 2006年東海大学電子情報学部卒、同年国産ディーラー入社。営業職、店長を務めるも、17年5月輸入車ディーラーに転職。入社2年目に係長昇進、3年連続で販売優秀者表彰。その後人材育成にやりがいを見出し、20年プログレス入社。「人材を『人財』に」をテーマに活動中。静岡県出身、41歳。