24年の新車販売台数は、前年比2割増の49万台超になるなど市場拡大が進んでいる
経済成長が著しいベトナムでは高層ビルの建設が相次いでいる

 経済成長が続いているベトナムに、中国資本の波が押し寄せている。中国企業は貿易や投資を加速しており、新車市場が拡大しているベトナムのアフターマーケットも飲み込み始めた。現地のアフター関連の展示会では出展企業の半数を中国企業が占め、ベトナム企業でも中国資本が目立つ。電気自動車(EV)領域でも、急成長中のベトナムメーカー、ビンファストの陰で中国勢がEVのアフタービジネスでも虎視眈々(たんたん)と商機をうかがっている。一方で、日本勢の成長戦略にも欠かせない市場。中国企業の〝南進〟に楔(くさび)を打ち込むことはできるのか、ベトナム市場の現状と、アフター各社の戦略をひも解く。

 ギアボックスや変速機などを手掛けるベトナムハイタオマシナリーの担当者は、「中国のアフター関連企業は、ベトナムを重視している」とみている。例えば、カーケア用品の広州フラミンゴカーケアテックなどでは、最新の商品を率先してベトナムで売り込む。加えて、車両診断ツールを手掛けるオービーディースターテクノロジーをはじめ、高い技術水準を求められる製品を持ち込むところも多く、有望な市場とみていることが分かる。

 実際、日本貿易振興機構(ジェトロ)がまとめたベトナムと、主要国・地域別の輸入額をみると、対中国は2024年、前年比30%増の1440億㌦(約21兆円)で首位だった。ベトナムの市場やユーザーにとっても、中国企業の存在は欠かせなくなっている。

 投資分野でも、中国企業は積極的だ。自動車用フィルムを製造している安徽ジュルンニューマテリアルテクノロジーは「ベトナムでいくつかの製品開発を考えている」とし、現地のニーズに対応した研究開発に力を入れる考えだ。シートを手掛ける常州紅龍車両部品の担当者も、「(市販市場で)販売拡大に向けた投資を検討している」という。ベトナム外国投資庁によると、24年の外国企業からの直接投資のうち、中国は新規投資の件数が同29%増の955件でトップ。アフター関連でも、さまざまな分野で現地化を進める中国企業が増えていくものとみられる。

 また、両国間には南シナ海をめぐる領有権の問題などがあるものの、ここ最近は政治的にも結び付きが強まっている。4月には中国の習近平国家主席がベトナムを訪問。ジェトロによると、現地ではベトナム共産党の指導部と会談し、両国間で40超の覚書にも署名したという。6月にはベトナムがBRICsの10カ国目のパートナー国(準加盟国相当)にも認定された。中国政府の高官が歓迎の意を示すなど、関係が深まっていることを裏付ける。

 市場規模が大きなBRICsのパートナー国認定により、ベトナムへの経済効果は高まりそうだ。アフター関連の中国企業からも期待する声が出ている。後付け用の自動車ランプなどを手掛ける中国企業の担当者は「貿易がしやすくなる」と予想するなど、各社に同様の見方が広がっているようだ。

 アフター関連がメインの展示会「アウトメカニカホーチミンシティ2025」にも波及しており、各種コンプレッサーを手掛ける広州ADUニューエナジーは「ベトナムのパートナー国認定も理解した上で出展した」(担当者)と明かす。ブレーキパッドを手掛ける中国のある出展企業も、「顧客接点を増やし、ベトナムを軸に他の地域への拡販につなげる」考えも打ち明ける。この展示会の出展者数は401社だったが、193社が中国企業。中国資本を受け入れているベトナム企業を含めればもっと多くなるとみられ、BRICsとの関係強化が、より中国との親密度を増す結果となったもようだ。

 ベトナム市場の将来性も、中国企業にとって背中を押す材料の一つだ。二輪車が普及する一方で、自動車の保有率は世帯ベースで1割にも満たない状況が続いている。ただ、ジェトロによると24年の新車販売台数は、前年比2割増の49万台超と着実に増加している。ベトナム貿易振興庁のヴー・バー・フー長官は「25年には前年比で12%の成長率を記録すると予測されている」と、強気の市場見通しを語る。

 四輪車の普及がいまだ低水準であることは、伸びしろが大きいということでもある。実際、複数の中国メーカーが、ベトナムの新車市場へ参入したことも、これから見込まれる市場拡大を見据えたのが一因だ。これに、呼応するように、車の維持に欠かせないアフタービジネスを手掛ける中国企業も動きが活発になっている。今後、ベトナムのアフター市場で中国勢の存在感が高まりそうだ。