ダイハツ工業が約10年ぶりに全面改良した新型「ムーヴ」を発売した。会見や新車を披露した都内のホールには、歴代のムーヴ6台がずらりと並べられ、記者らの注目を集めた。同社の中では、最新技術を搭載するなど、これまで先陣を切る役割を果たしてきた。6台の役割をひもとくと、ここ30年の軽自動車の流れも見えてきた。
初代ムーヴは、1995年に発売した。ライバルのスズキ「ワゴンR」が93年に発売しており「ワゴンRに対抗するために発売した」(同社担当者)。ワゴンRはそれまでになかった背の高いスタイルで、人気となった。初代ムーヴも49万台売れた。
ムーヴの中で一番売れたのは2台目(98年発売)で約68万台。ちょうどこの年、軽自動車の規格を拡大(全長および全幅)したことも追い風になった。「標準」のほか、裏メニュー的な「カスタム」と、2つのモデルを発売当初から用意。「ワゴンRに追いつけ追い越せだった」と同社担当者は話す。
プラットフォームを刷新した3代目(2002年発売)は、全高を低くし、ガラスエリアを狭めたこともあり、より乗用車に近いフォルムに変更。特に「カスタム」はかっこよさを重視した。これも64万台売れた。
4代目(06年発売)は、フロントからルーフまで流れるようなデザインのワンモーションフォルムを採用するなど上質感を高めた。ただ、販売台数は58万台に減少した。これは、さらに背の高いスーパーハイト系ワゴンの「タント」を03年に発売したことで、そちらに一定数、顧客が流れた影響だという。
そのため5代目(10年発売)は49万台、6代目(14年発売)は50万台と、ムーヴの年当たり販売は徐々に減少していく。「5代目の頃は『N-BOX』(ホンダ)、『スペーシア』(スズキ)など他社のスーパーハイト系の競合車も増えてきた」と同社担当者は振り返る。
ムーヴは、軽の中では最先端の技術を投入してきた面もある。4代目では、「KF型」自然吸気エンジン(ターボエンジンもあり)と無段変速機(CVT)の組み合わせによる低燃費を訴求。この組み合わせは現在も使われている。また、5代目をビッグマイナーチェンジした12年には、軽で初めて衝突被害軽減ブレーキ「スマートアシスト」を5万円程度で設定。軽でも先進安全装備を一気に普及させた立役者となった。