初代 当時の主力車種「ミラ」をベースに背を高めた初代。ワゴンRに対して5ドアや横開きリアゲートで差別化
2代目 丸目4灯ヘッドランプが特徴的な2代目「エアロダウンカスタム」。歴代ムーヴの最量販モデルとなった
3代目 3代目「カスタムRS」直線基調のデザインで〝かっこよさ〟を重視した
4代目 4代目の標準モデル「X」。ワンモーションフォルムなど上質感を演出
5代目 5代目の標準モデル「X」の「フロントシートリフト」仕様車。スマートアシストを初設定した
6代目 6代目「カスタムRSハイパーSA」。ボディー高剛性化や先進装備の搭載など基本性能を大幅に高めたが、軽市場はスーパーハイト系やスライドドア車が主流に
新型 約10年ぶりに全面改良した新型ムーヴ。スライドドアの採用や低価格の実現で販売回復を目指す

 ダイハツ工業が約10年ぶりに全面改良した新型「ムーヴ」を発売した。会見や新車を披露した都内のホールには、歴代のムーヴ6台がずらりと並べられ、記者らの注目を集めた。同社の中では、最新技術を搭載するなど、これまで先陣を切る役割を果たしてきた。6台の役割をひもとくと、ここ30年の軽自動車の流れも見えてきた。

 初代ムーヴは、1995年に発売した。ライバルのスズキ「ワゴンR」が93年に発売しており「ワゴンRに対抗するために発売した」(同社担当者)。ワゴンRはそれまでになかった背の高いスタイルで、人気となった。初代ムーヴも49万台売れた。

 ムーヴの中で一番売れたのは2台目(98年発売)で約68万台。ちょうどこの年、軽自動車の規格を拡大(全長および全幅)したことも追い風になった。「標準」のほか、裏メニュー的な「カスタム」と、2つのモデルを発売当初から用意。「ワゴンRに追いつけ追い越せだった」と同社担当者は話す。

 プラットフォームを刷新した3代目(2002年発売)は、全高を低くし、ガラスエリアを狭めたこともあり、より乗用車に近いフォルムに変更。特に「カスタム」はかっこよさを重視した。これも64万台売れた。

 4代目(06年発売)は、フロントからルーフまで流れるようなデザインのワンモーションフォルムを採用するなど上質感を高めた。ただ、販売台数は58万台に減少した。これは、さらに背の高いスーパーハイト系ワゴンの「タント」を03年に発売したことで、そちらに一定数、顧客が流れた影響だという。

 そのため5代目(10年発売)は49万台、6代目(14年発売)は50万台と、ムーヴの年当たり販売は徐々に減少していく。「5代目の頃は『N-BOX』(ホンダ)、『スペーシア』(スズキ)など他社のスーパーハイト系の競合車も増えてきた」と同社担当者は振り返る。

 ムーヴは、軽の中では最先端の技術を投入してきた面もある。4代目では、「KF型」自然吸気エンジン(ターボエンジンもあり)と無段変速機(CVT)の組み合わせによる低燃費を訴求。この組み合わせは現在も使われている。また、5代目をビッグマイナーチェンジした12年には、軽で初めて衝突被害軽減ブレーキ「スマートアシスト」を5万円程度で設定。軽でも先進安全装備を一気に普及させた立役者となった。