【台北=山本晃一】台湾の電子部品大手、国巨(ヤゲオ) の陳泰銘(ピエール・チェン)会長は6月7日、日刊自動車新聞など一部メディアのインタビューに答え、芝浦電子へのTOB(株式公開買い付け)で、芝浦電子側と1~2週間のうちに面談するとの見通しを明らかにした。外為法(外国為替及び外国貿易法)の審査をめぐる手続きについても「日本政府とのコミュニケーションはうまく行っている」とし、「現状のTOB価格(6200円)は妥当と考える」と、さらなる引き上げの可能性についての言及は避けた。芝浦電子の製品について「ADASや自動運転、HPC(高性能コンピューティング)でセンサーの需要が高まる」と車載事業を柱の一つに想定する考えを示した。

陳会長が台北郊外の本社で取材に応じた。

ヤゲオは、ミネベアミツミとのTOB合戦において、経済産業省などによる外為関連の審査結果次第では、TOBの撤回を迫られる可能性がある。

陳会長は、芝浦電子とは来週か再来週にも東京で面談する予定になったとし、「対話できるのはありがたい」と期待を示した。外為関連の手続きをめぐる日本政府との交渉については「詳細を話すのは時期尚早だが、うまく行っている」と手ごたえを語り、技術流出など安全保障上の懸念についても「流出させてもメリットはない」と否定した。

陳会長は「(当社は)ほとんどの自動車メーカーと取引があり、開発段階からデザイン・インで取り組める。芝浦電子の販路はこれまで日系メーカーが中心だったが、当社と連携することで販路が広がり、エヌビディアのようなAI(人工知能)関連を含めて、新たな取引先に浸透できる。新規の投資もできる」と述べ、TOBにより研究開発から販売までさらなる成長が期待できると強調した。

芝浦電子へのTOBをめぐっては、ミネベアミツミがホワイトナイトとして名乗りを上げ、ヤゲオとTOB合戦を繰り広げている。ミネベアミツミの買い付け価格である1株あたり5500円に対して、ヤゲオは6200円と上回っている。ただ、ミネベアミツミはヤゲオの外為関連の手続きなどに疑義があると提起している。