フロスティング
フルーチング(リッジマーク)

 NTNが、軸受けの損傷につながる「電食(電蝕)」発生メカニズムの解明に取り組んでいる。軸受け内部の放電現象に着目し、電流の大きさにより、異音や振動などの不具合に波及する状態を特定した。軸受けの寿命予測にもつながる技術で、ユーザーの使用条件に応じ、最適な製品を提案できるようになる。現在、一部顧客の協力を得て実証を進めており、2027年春にも技術の実用化を目指す。

 電食は、異なる種類の金属の接触部が腐食する現象を指す。電位差や外部電流の影響などが理由として挙げられる。軸受けの場合、内部に電流が通過することで軌道面などが損傷する現象を指す。損傷の度合いにより①クレーター②細かい凹凸ができるフロスティング③波板状になるフルーチング(リッジマーク)の大きく3段階に分けられる。①②では使用に影響がないことが多いが、③では異音や振動など不具合に直結する。

 軸受け各社は、電食対策として軌道体に絶縁体のセラミックボールを使用したり、外輪に絶縁被膜を形成させたりしているが、発生メカニズムには不明確な部分も多い。

 今回の研究開発では、電流値の大きさと、凹凸の形状や損傷度合いとの関係を明らかにすることを目指した。電流値を大中小と設定し、長時間試験と短時間試験を実施したところ、電食は軸受けに加えられた総エネルギー量だけでなく、単発の放電エネルギーの大きさが影響することが分かった。また、電流値によりクレーター形状が異なり、リッジマークの形成に影響を与えることも分かった。

 今後、〝電食寿命〟の予測に向け、軸受けにかかる荷重や温度、回転速度などの使用条件に関わるパラメーターの特定を進める。

 電動化を背景に、eアクスル用軸受けの需要が増えていくことが予想される中、品質不良を防ぐためにも電食対策の重要性が増している。同社は、軸受けの使用条件に適した電食対策を提案することで、技術面・コスト面の双方で競争力を強化し、事業の成長につなげていく。