イベントでは鈴木亮平さん(写真左)と日産社員が「eパワー」や自動運転技術などについて語った
全面改良する「エルグランド」の一部イメージを公開
国内導入を検討する「パトロール」(中東仕様車)

 日産自動車は、新型車の投入で国内市場を活性化する。2026年度にミニバン「エルグランド」を発売すると正式発表したほか、中東市場を中心に人気の大型SUV「パトロール」も国内導入の検討を進める。日産では26年度までに国内市場に計4車種の新型車の投入を予定する。米国市場がトランプ政権による関税政策で揺れており、国内市場の重要性が高まっている。魅力的な新型車の投入でラインアップを拡充し、伸び悩む国内事業の回復につなげていく。

 22日に本社(横浜市西区)でブランド関連イベントを開き、俳優の鈴木亮平さんを新ブランドアンバサダーに起用することを発表。合わせてエルグランドの車両イメージを公開した。

 エルグランドの全面改良は16年ぶりで、第3世代のシリーズハイブリッドシステム「eパワー」を搭載する。排気量1.5㍑の発電専用エンジンはより幅広い回転数で熱効率を高め、従来システムより高速燃費を約15%向上し、コストも20%削減できるという。発売時期や価格、生産拠点などは順次明らかにしていく。

 パトロールは日産車体九州で生産する海外専用モデル。昨年全面改良した新型の販売が好調で、増産に向けた準備を進めている。国内市場でも大型SUVのニーズは高く、同モデルの導入を求める声があることから検討を始めた。日産はこのほか、25年度中に電気自動車(EV)「リーフ」と軽自動車も全面改良を予告している。

 日産の24年度の国内販売は約48万台とみられ、前年度から4千台の微減となる。主力の北米市場では在庫と販売奨励金の増加により利益率が低下しており、今後はトランプ政権の関税政策による販売への影響も懸念される。26年度までの事業再生計画では、損益分岐点を250万台へと引き下げ、年間350万台の販売で営業利益率4%を稼げる体制を目指している。実現には国内市場での収益力向上も欠かせない。

 国内販売担当の杉本全執行職は「お客さまの声を真摯に受け止め、再出発の一歩目としてこの場を設定した。これまで以上に開発・生産体制を強化し、期待を超える車作りに取り組む」と決意を語る。

 ただ、国内販売店幹部からは「新車を計画通り出せる実行力がないと困る」との声も上がる。待望の新型車を武器に反転攻勢をかけられるか、新たな経営体制の手腕に注目が集まる。