日本でも売り出す125ccマイルドハイブリッドの「ファッジオ」

 ヤマハ発動機は、向こう3年間で投入する新型二輪車20車種のうち約3割を電動化する。自社開発のほか、出資先のスタートアップの車両を加えて電動車のラインアップを増やす。EVバイクの需要が一部の国・地域で伸び悩んでいる現状を踏まえ、バイオエタノールや水素対応も視野にパワートレインの「マルチパスウェイ戦略」を採り、自社製品の脱炭素化と事業採算を両立させていく。

 2027年12月期までの3カ年中期経営計画では、新型車を20車種投入する方針を示している。中計ではコア事業である「二輪車」「マリン」の再強化を掲げ、二輪事業は3年間の研究開発費を前中計比で2割増、設備投資を4割増に積み増す。車載電池を活用したエネルギーマネジメント技術の開発も進める。

 二輪車市場は通勤や通学に用いるコミューター系と、趣味性の高いファン系に大別される。ヤマハ発は、電動車のボリュームゾーンとしてコミューター系を中心とした排気量125~200ccの小型二輪車を想定する。

 125ccのマイルドハイブリッド機構を搭載した「ファッジオ」はインドネシアなどアジア圏に投入済みだが、国内でも今秋以降に売り出す。現地政府の優遇もあり、電動二輪車市場が急拡大しているインドでは、現地スタートアップのワールドオブリバーとの協業を通じ、電動車を投入する。

 一方で、ファン系を中心とした中型二輪車以上の電動化については「バッテリーが重くなりバランスも悪くなる」(設楽元文社長)ことから、電動化のハードルは高いとみる。それでもヤマハ発として、駆動用と発電用の2基のモーターで構成するシリーズパラレルハイブリッド機構に着目。まずはミドルクラスのスクーターへの搭載を想定し、開発を進めていく。

 設楽社長は「30年ぐらいまでのイメージだと、EVの影響度合いは以前見積もっていたよりもかなり後ろに下がっている」と話す。EVの普及は充電インフラや政府の補助政策、エネルギー事情によって左右され、普及のペースを読みにくい。国や地域によってはバイオエタノールや水素の方が脱炭素化に有効なケースもある。ヤマハ発としては、中長期的な目線でパワートレインの〝多様性〟を維持していく方針だ。