商用車の自動運転技術を開発するT2(森本成城CEО、東京都千代田区)は、自動運転トラックの普及へ向け、自動運転システムや、そのための課題解決策(ソリューション)をパッケージで提供する事業を始める。リースや整備事業も進めるほか、電気自動車(EV)開発など自動車メーカーとの連携も検討する。自社だけではなく「オールジャパン」で持続可能な次世代物流を目指す。新たな資金調達も計画している。
森本CEОが、日刊自動車新聞などの取材で方針を示した。メディア向けに事業の進ちょく状況などをまとまった形で説明するのは初めて。T2は、レベル2(高度な運転支援)の輸送事業を7月から始め、2027年にはレベル4(特定条件下での完全自動運転)への移行を計画している。輸送エリアを順次拡大し、32年には2千台超の規模で事業を行う構想だ。また将来的な株式上場(IPО)も見込んでいる。
こうした中、「自社だけの取り組みでは限界があり、仲間作りが重要」(森本CEО)と判断し、ハード・ソフト両面で取り組むことにした。
そこで、安全な自動運転トラックの量産へ向け、自動車メーカーやティア1(一次部品メーカー)などと連携し、自動運転のシステム・ソフトを提供する。また、自動運転トラックを走らせるため、その導入や拠点構築・運用、遠隔監視や異常時の駆けつけサービス、保険対応などをパッケージで提供する。
保守・メンテナンスでは、「自動運転のシステムや大型車に対応する整備のできる場所が日本にはまだない。米国も同様の課題を抱えている」(同CEО)という。そのため、自社で工場を設けて整備を内製化する予定だ。29年度にも開始する方針。
また、「自動運転トラックは通常の1.5倍くらいの値段になる。中古価格もまだ見えづらく運送会社が買いにくい」(同)との課題もある。今後、保守メンテナンス付きのオペレーティングリース(リース資産を最終的に返却する)事業を29年度にも始める。「日本ではファイナンスリース(リース資産が最終的にリース先の所有になる)が主だが、残価リスクを取れない面もある」(同)ためだ。
将来はEV化を見すえた取り組みや、水素などカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)燃料の活用もめざす。EVトラック開発で内外の自動車メーカーとの連携を検討し、EVに最適な自動運転システムを開発。路面を使った非接触給電など充電インフラへの参画も検討する。速度などを最適な条件で安定的に走れることから燃費が向上する点もアピールする。
「プラットフォーム、機能を提供する会社になって収益性も上げ、サステイナブルな事業にしたい」(同)とした。
資金面では今年半ばにも40億~60億円を調達。その後50億~100億円の調達を検討している。自動車業界はじめ新たな出資への関心も寄せられているという。
T2は22年設立。4月の従業員は約160人で、大半はこの1年余りの入社という。今後も200人台前半程度に増やしていく方針だ。