2024年の自動車整備業界は、OBD(車載式故障診断装置)検査の本格運用という大きなトピックをめぐる動きが目立った。25年も整備に関する行政の動きは活発で、特に旧ビッグモーター問題に端を発したコンプライアンス(法令順守)関連や保険販売は大きく変わりそうだ。以前から続く人手不足などへの対応など、整備事業者が乗り越えなければいけない課題は今年も多い。
25年度の整備行政は監査において、デジタルトランスフォーメーション(DX)化や柔軟な実施体制の構築などに取り組む。また、事故車修理の手間や工賃交渉の実態調査を4月から開始する。この調査では「標準作業時間」の妥当性や工賃単価交渉などを調べ、今後の政策に反映させる。物価や人件費などの上昇に対して車体整備事業者がコスト増を工賃などに転嫁しやすくする環境を整える狙いもある。
車検関連では現場の混雑緩和と負担軽減を狙いに、4月に車検証の有効期間満了日の2カ月前から受けられるように変わる。加えて、10月には輸入車を対象にしたOBD検査の本格運用が始まる。対象となる車が増えるとともに、電子制御装置の整備の重要性がさらに高まることになる。
一方で、車両のサイバーセキュリティー対策が高度化しているため、ディーラーでしか行えない作業も増加している。整備事業者は複数のブランドに対応するため、汎用スキャンツール(外部故障診断機)を活用しているが、その汎用機では対応できない事例が増加傾向にある。国交省では、整備事業者も高度な整備が行えるようにするための環境を整えていく。
コンプライアンスについては昨年3月、国交省が車体整備の透明性の確保に向けたガイドラインを公表した。これに対し、BSサミット事業協同組合(磯部君男理事長)は独自のエビデンスシステムの運用などで対策を進める。日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)も25年度の技能講習のテーマに「コンプライアンス順守」を掲げるなど重要視している。
旧ビッグモーター問題を受けて保険業法改正案について議論してきた金融庁は、昨年12月に方向性を固めた。顧客にこだわりがなければ、乗合代理店の判断で特定の損害保険会社の商品を販売できた長年の商習慣が変わろうとしている。特に、大規模な兼業代理店には新たな規制を課し、中小規模にも「自主的な取り組みを促す」ことになった。自動車保険金の不正請求を防止するため、何らかのルールが課される可能性がある。保険代理店を営むほとんどの整備事業者は、中小規模に該当するが動向を注視する必要がありそうだ。
一部の自動車メーカーによる認証不正問題の影響を強く受けた国内の新車販売は、販売環境の正常化によって24年実績(442万1494台)を上回りそうだ。今秋には「ジャパンモビリティショー」も開かれる予定で、メーカー各社からの新型車の情報発信が加速すれば、新車市場の活性化も期待できる。こうなれば、〝タマ不足〟に悩まされていた中古車業界にとっても追い風になりそう。新車の販売台数が増えれば、下取り車の発生にもつながるからだ。小売りに加え、中古車オークション(AA)も盛り上がる可能性がある。ただ、使用済み自動車の確保をAAに頼るリサイクル事業者にとっては、仕入れ環境の改善には若干時間がかかりそうだ。
月刊「整備戦略」2月号では特集「2025年を乗り越える」を掲載します。