VW「ID.3」
メルセデス「V300d 4マチック」
BMW「iX2」
ステランティス フィアット「パンダ}

 ドイツの主要自動車メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)、メルセデス・ベンツ、BMWが発表した2024年の新車販売台数は、3社そろって前年を下回った。いずれも世界最大市場の中国での落ち込みが響いた。欧米の自動車ブランドを傘下に収めるステランティスは、北米と欧州の不振で減少した。電気自動車(EV)販売を見ると、VWとメルセデスが中国の伸び悩みとドイツでの補助金終了が響きマイナス。これらに対し、BMWはラインアップ拡充などが奏功して2桁伸び、明暗が別れた。

 地域別に見ると、欧州はVW(西欧と中央・東欧の合計)が前年比0.1%減、BMWが微増で前年並みを維持した。メルセデスは高級車の落ち込み、ステランティスは小型車がモデルチェンジの端境期に入ったことで、それぞれ減少した。

 中国は、現地メーカーの価格攻勢に押され各社ともマイナスで、販売計画が未達に終わった。

 北米は〝中国依存〟の緩和を狙い拡販に力を入れたVW、メルセデスがプラス、BMWが微増。ステランティスは、傘下のクライスラーの過剰在庫解消などが響き2割強落ち込んだ。

 VWのブランド別販売では、量販車のシュコダ、セアト/クプラが伸びた。その一方、高級車はアウディ、ベントレーが2桁減少し苦戦が目立った。

 メルセデスは量販クラスの「Eクラス」「GLC」が好調な一方で、「Sクラス」などの高級車と「A/Bクラス」などのエントリーモデルの不振で、総台数が落ち込んだ。バンは10~12月期に四半期ベース過去最高の台数を記録し挽回したが、通年では米国・中国での内燃機関(ICE)車の低迷などをカバーできず前年を割り込んだ。

 BMWはミニの2桁減少が響き全体を押し下げた。BMWブランドは、統合ブレーキシステム(IBS)のリコール問題による納車停止もマイナス要因になった。

 電動車販売では、VWはEVが落ち込む一方、プラグインハイブリッド車(PHV)が同5%ほど伸びて27万台に増加した。

 同社の主なEV車種別台数はVWの「ID.4/ID.5」が18万2千台、「ID.3」が14万9100台、「ID.7」(含むツアラー)が4万100台、「ID.バズ」(含むカーゴ)が2万9900台。アウディ「Q4 e-トロン」(含むスポーツバック)が10万7700台、シュコダ「エンヤック」(含むクーペ)が7万9500台、クプラ「ボーン」が4万1800台。

 メルセデスは、PHVの販売が同1.8%増の18万2500台で、前年には4万台以上あったEVとの差を2600台に縮めた。

 BMWは電動車全体の台数が伸びたが、PHVは同12.4%減の16万6621台に減少した。VWとメルセデスの電動車販売ではEVが落ち込みPHVが伸びたのに対し、BMWはEVを着々と増やしている。EV市場は踊り場に入ったが、BMWのケースは商品戦略によってはEVにも拡販の余地が見いだせることを示している。

 一方、EVの世界販売では米テスラと中国・比亜迪汽車(BYD)が170万台超を販売し、他社に圧倒的な差をつけている。こうした中で、勢いを増しているPHVがEVに圧力をかけ、電動車市場の構図を変革するのかが注目される。