ホンダは、全固体電池のコストをリチウムイオン電池(LIB)比で2020年代後半に25%、40年代までに40%それぞれ削減する。使用する材料を最小化するほか、生産効率を高めて製造コストを抑制。これにより同等の航続距離比でコストダウンを可能とする。同時に小型化も図り、20年代後半にはLIB比で大きさを50%、重量を35%削減。コスト低減や性能、生産の安定性を両立する量産技術を確立し、20年代後半の量産を目指す。電気自動車(EV)などの商品力を大幅に引き上げる全固体電池の実用化により、中国をはじめ競争が激化するEV市場で存在感を高めていく。
開発中の全固体電池は、栃木県さくら市内に新設したパイロットプラントで、実用化に向けた検証を進めていく。
製造コストを削減するために正極と絶縁層の塗工工程の集約化や、組み立て工程に「ロール・トゥ・ロール」方式などを用いることで生産工程の効率化や高速化を図る。また、各装置ブースを最小限に抑えることで、電力などの間接コストも削減する。
コスト低減に加え、小型化・軽量化できるのも全固体電池の特徴だ。性能向上によりLIBと同等の容量を確保すれば、航続距離を2倍に延ばすことができる。
全固体電池の搭載車種は未定だが、高価格帯のEVから搭載されるとみられる。将来的には、二輪車や航空機などへの展開も検討する。本田技術研究所の大津啓司社長は「スケールメリットは必要。最初の少量立ち上げ時は(価格が)高いかもしれないが、EVは拡大していくし、二輪車などの事業もあるので、全体でどうスケールメリットを出すか、技術が完成するタイミングに合わせてしっかりイメージを描いていきたい」と語った。
全固体電池は、トヨタ自動車が27~28年に、日産自動車は28年度に車両への搭載を目指している。中国勢では、広州汽車集団がEVブランド「アイオン」の高性能モデル「ハイパー」に搭載して26年に発売すると発表済みだ。大津社長は「(電池技術は)中国や韓国に負けている状態。(全固体電池は)この状況をひっくり返す一つの技術にはなる」と述べた。