商品開発を担当した高田学氏は「持って帰りたくなるデザイン」に工夫を凝らした
大阪府泉佐野市に設置された「洗車365」

 ソフト99コーポレーションは、自社製品の販路開拓を狙いに新たなビジネスモデルの確立に力を入れている。営業統括本部の傘下に2023年4月、新規事業の立ち上げを担う「リシンク推進室」を新設。これまで主戦場としてきた小売店や専門の施工店以外への提案強化につながる取り組みを本格化している。この第1弾としてコイン洗車場向けに、自動販売機で洗車用品を購入できるシステム「洗車365」を開発した。同社は25年度中に、100台の設置を目指しており、集合住宅が多い都市部などで高まる洗車場の需要に対応していく考えだ。

 洗車365は中古の自販機を洗車用品専用に改修し、新品同様によみがえらせた。これに、自社で開発したボトルパッケージに商品を詰め、販売する仕組みだ。取り扱うのは洗車スポンジや拭き取り用のクロスのほか、タイヤ・ホイール用の洗浄ブラシなど全16アイテム。自販機の本体正面には見本品を置く代わりに、商品説明の情報を充実することで無人でも顧客への提案力を高める工夫を盛り込んだ。

 実は、同社が自販機を活用した事業を行うのは、今回が初めてではない。30年前にも同様のサービスを提供し、最盛期には全国に900台も設置していたという。ただ、全国で3千カ所を超えていたコイン洗車場が10年代に急減。同社の事業も縮小を余儀なくされた。ただ、現在、洗車する場所に困るユーザーが少なくない都市部などで、コイン洗車場の需要が高まっているという。同社はこれを商機と捉え、新サービスの開発に取り組んだ。

 今回、徹底したのが環境負荷の低減だ。従来のボトルパッケージには、底面にふたを閉めやすくするための空気抜き用の穴があった。使用後に濡れた洗車用品を入れると水分が漏れるため、持ち帰らずに、その場で捨てるユーザーが多かったという。このため、新たなパッケージは、穴ではなくボトル上部にスリットを入れた構造として密閉性を高めた。さらに、捨てにくい工夫として、ボトルパッケージの側面には商品ごとにオリジナルのキャラクターをデザインした。実際に6月から実施したテストマーケティングでも、ほとんど捨てられず、一定の効果が確認できた。

 使用する自販機も、飲料用の中古品を再利用した。ここ数年、自販機の設置台数が減少傾向にあり、その反面、中古機が増加しているという。ただ、自販機は再利用のスキームが確立されておらず、廃棄か、小規模事業者が購入するにとどまっていた。リシンク推進室の三宅篤室長は「中古品を活用した自販機ビジネスができれば、こうした問題を解決できる」と、社会的意義もあるとみている。

 新サービスは9月末に発売したが、すでに数社から問い合わせがあるなど反応が出ている。24年度内の設置目標としている40台は、前倒しで達成できる見通しだという。また、ボトルパッケージにはカー用品以外も収納ができることから、異業種に対しても自販機ビジネスの提案を進め、事業拡大につなげていく考えだ。

(関西支社・草木 智子)