半導体受託製造最大手のTSMC(台湾積体電路製造)は20日、ドイツ・ドレスデン北部に車載半導体を製造する工場の起工式を開いた。欧州初の製造拠点として2027年に稼働する予定。アジアに集中している半導体サプライチェーン(供給網)のリスク軽減を図る。設備投資の約半分に当たる50億 ユーロ (約8090億円)をドイツ政府が支援する。

 TSMCが70%、ロバート・ボッシュ、インフィニオンテクノロジーズ、NXPセミコンダクターズがそれぞれ10%ずつ出資して設立したESMC(ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)の工場で、車載半導体を受託製造して欧州自動車メーカーなどに供給する。

 新工場では28/22㌨㍍(㌨は10億分の1)プロセス、16/12㌨㍍プロセスの車載向けや産業機械向け半導体を生産する。生産能力は300㍉㍍ウエハー換算で月産4万枚。工場の従業員数はエンジニアを含めて約2千人で、総投資額は100億 ユーロ (約1兆6180億円)を超える。

 先端半導体を効率的に製造できるTSMCの生産技術を投入する。新工場の近隣にあるボッシュのウエハー工場などとも連携していく。

 起工式には欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長やドイツのショルツ首相など政府関係者が多数出席した。TSMCの魏哲家会長兼CEO(最高経営責任者)は「急速に成長する欧州の自動車や産業分野の半導体のニーズに対応する」と語った。

 コロナ禍での車載半導体不足で欧州自動車メーカーも完成車工場が停止・減産するなどの影響を受けた。地政学上のリスクが高まる中、欧州域内で半導体を安定調達する体制の整備を進める。

 TSMCは、戦略物資である半導体の安定調達ニーズが高まっているのに対応、政府による巨額の補助金も受け、日本の熊本や米国でも半導体製造拠点の建設を進めてリスク分散を図っている。