「エアバッグとシートベルトの一体販売」を協業の目的に掲げ、2021年から豊田合成との人材交流を進めてきた。昨年度は中期経営計画の目標を前倒し達成し、〝地盤固め〟から次を見据える。「協業を深め、加速させることが使命。これまでの取り組みを受注という成果に結実させる」と意気込む。

 電気自動車(EV)市場が拡大する一方で、コスト競争も激化の一途をたどる。「自動車メーカーからも原価低減への期待が大きい」と話す。21年以降、豊田合成の協力も得て、国内外の生産拠点にトヨタ生産方式(TPS)を導入。タイ工場では〝カイゼン〟の意識が定着し、現地社員が主体的に省人化や生産性向上に取り組むようになった。

 法規に加え、各国の「自動車アセスメント」の厳格化により、安全部品もたゆまぬ進化が求められる。「受け身の開発ではなく、サプライヤーから自動車メーカーに提案する流れに変わりつつある」と認識する。トヨタや豊田合成で人事畑を歩んできた経験から、〝人への投資〟にも意欲を見せる。

 大学時代は京都の古き良きサブカルチャーの街、一乗寺で過ごした。「四畳半一間のような学生寮だった」といい、学業の傍(かたわ)らバンド活動に勤しんだ。阪急電車で大阪・梅田に繰り出した頃を思い出し「懐かしい」と相好を崩す。

 40年ぶりの関西生活。芦森工業に顧問として赴任した今年1月、「両社の信頼関係が着実に築けている」と手応えも感じた。競合から協業へ、群雄割拠のEV市場に勝負を挑む。

 

〈プロフィル〉ざいつ・ひろまさ 1985年3月京都大学法学部卒業、同年4月トヨタ自動車入社。2013年6月総務部長などを経て、17年6月に豊田合成執行役員、24年1月に芦森工業顧問を経て、6月から現職。1963年3月生まれ、61歳。大分県出身。趣味はウオーキング。

(草木 智子)