日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)は31日付で、取引適正化に関する「自主行動計画」を改訂した。自工会の方針に基づき、原材料費とエネルギー費の高騰は「全額転嫁を目指す」ことを明記した。下請法違反となる具体例や、目標価格のみを提示してつじつまの合う見積もりを求めるといった「望ましくない事例」も盛り込んだ。自工会は自動車メーカーとサプライヤーの競争力強化に向け、健全な取引環境の整備が土台となるとして、会員各社の遵守を求めていく。

 「自主行動計画」は2017年3月、当時の経済産業大臣の要請を受け、中小企業の賃上げと取引慣行の適正化を狙って制定された。今回の改訂では下請法に基づき、違反となる11事例などを追記した。

 具体的には取引金額を決定する際、これまでの取引より著しく低い金額とする「買いたたき」のほか、発注後の減額や取り消し、発注者が指定する製品を強制的に買わせるといった違法行為を例示した。また中小企業庁と公正取引委員会の通達に基づき、支払いはできる限り現金化し、受領日から60日以内に全額支払うことも明記した。

 発注先が取引先に対し、目標価格のみを提示した上で合致した見積もりを求めることや、他社への発注を示唆して意図した対価を押し付けるといった、「下請振興基準」の「望ましくない事例」も明記した。自工会は、原価低減が競争力強化につながる一方で、法令を守った健全な取引環境が「全ての土台となる」としている。

 自工会は日産自動車の下請法違反勧告などを受けて会員企業に緊急点検を実施しており、結果は6月末を目処に公表する予定だ。「法令遵守を大前提に、適正取引を強力に進める。日本自動車部品工業会とともに、自動車産業のサプライチェーン(供給網)全体で取り組みを進める」としている。