いすゞのピックアップトラック「D―MAX」

 いすゞ自動車は、アフリカで新車供給能力を増やす。南アフリカにあるいすゞモーターズサウスアフリカ(IMSAf、東ケープ州)の既存工場の年産能力(約3万台)をすべてピックアップトラックに振り向け、トラックなどの商用車は新工場を建てて生産を移す。アフリカの新車市場は年間で約120万台ほどに過ぎないが、経済成長に伴い、今後も着実な成長が見込める。特にトラックやバス、悪路に強いピックアップトラックは乗用車より需要が先に本格化するとみて現地生産を強化する。

 IMSAfの工場ではピックアップトラックをノックダウン(KD)、トラックやバスなどの商用車をセミノックダウン(CKD)で生産しており、年間の生産能力は3万1800台だ。22年の生産実績はピックアップトラックが2万5700台、商用車が3800台だった。今後、同工場の年産能力をすべてピックアップトラックに振り向け、商用車は新工場を建設して生産する。一連の投資額は500億円弱の見込み。新工場の立地や稼働時期、生産能力は明らかにしていない。

 いすゞは、2024年度からスタートした中期経営計画で、30年度の世界販売を85万台以上と、23年度見込み(68万台)比で25%増やす計画。販売増のけん引役として期待するのがアフリカで、商用車は3万台(同1万6500台)に増やす。ピックアップトラックなどのLCVは地域別の販売計画を開示していないが、アフリカなどのグローバルサウスで伸ばす考えだ。いすゞの南真介社長は「経済が離陸する段階ではわれわれが得意とするトラックやバス、ピックアップの需要が拡大する。今がその時期だ」と語る。

 豊田通商などによると、アフリカの新車市場は21年で約120万台(大型車84万台、小型車36万台)。25年には150万台(大型車100万台、小型車50万台)、30年には300万台に増えるとの予測もある。日本メーカーの現地生産もじわりと増えており、豊通はトヨタ車やスズキ車のKD生産などを4カ国で手掛ける。三菱自動車はアフリカで10年ぶりとなるピックアップトラックの生産をケニアで22年8月に開始。ホンダも「HR―V」のKD工場を23年12月にガーナで稼働させている。