車載半導体の開発競争が世界的に激化している。電動機構の効率を左右するパワー半導体に加え、ECU(電子制御装置)などの演算処理を担うロジック半導体では、チップレット技術による車載SoC(システム・オン・チップ)技術の開発が進む。この分野をリードするのは米エヌビディアやクアルコムなどの海外勢だが、日本勢も自動車メーカーを交えた技術研究組合をつくり、巻き返しを目指す。
チップレットは、小間切れにした複数のチップを接続して1つのパッケージとする半導体技術で、SoCは、文字通り1つのチップの上にシステムを集積したものだ。処理能力が高まるだけでなく、歩留まりの改善や汎用性など多くの利点があるが、チップレット技術を駆使した車載半導体はまだない。温度変化や振動といった過酷な条件に耐える必要があるからだ。
エヌビディアは、3月に開いたイベントで、SoCを活用したロボティクス開発を発表したほか、昨年には台湾の鴻海精密工業が同社との連携拡充を発表、車載SoCを組み込んだプラットフォーム作りなどを進めている。クアルコムは1月の「CES2024」で、主力半導体「スナップドラゴン」に基づくSoCをめぐり、独ロバート・ボッシュとの共同開発を発表。デジタルコックピットと先進運転支援システム(ADAS)を1つの車載SoCで共存できるよう設計する。
これに対し、米インテルは、電気自動車(EV)用SoCを手がけるファブレスの仏シリコンモビリティを買収するほか、SoCの新製品群を披露し、同社が力を入れる人工知能(AI)機能搭載で、クアルコムやエヌビディアに対抗する構えだ。
EVで存在感を高める中国勢は、エヌビディアなどに開発や供給を頼ってきた。ただ、先端技術をめぐる米国の対中規制が強化されるのに伴い、パワー半導体やSoCの内製を目指す動きが広がる。
日本では自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA、山本圭司理事長=トヨタ自動車シニアフェロー)による枠組みが動き出す。チップレットの「土台」は共同開発し、アプリケーションは競争領域として棲(す)み分ける。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を支える車載半導体の開発競争も激化している。
















