ヴァレオの最新LiDAR「スカラ3」
LiDAR分野CTOのクレマン・ヌヴェル氏

【米ラスベガス=中村俊甫】ヴァレオは2024年市場投入予定の最新LiDAR(ライダー、レーザースキャナー)「スカラ3」について、1000ドル(約15万円)以下で販売する。レーザー光の反射で物体を捉えるLiDARは自動運転の高度化に欠かせないが、普及には価格が課題だ。同社は現時点で10億ユーロ(約1500億円)以上の受注を獲得しており、コスト面でも競争力を高める。さらに認識技術など性能も進化させて、運転支援や自動運転の安全性を高め、市場での存在感を強めていく。

同社のライダーは17年のアウディ「A8」を皮切りに、ホンダやメルセデス・ベンツなどへ納入した量産実績を持つ。スカラ3は24年末、ステランティスの新型車への採用が決まっている。複数の自動車メーカーなどから10億ユーロ超の受注を獲得しており、最新の「スカラ3サテライト」などを競争力のある価格で販売する。船舶や空港など異業種からの引き合いもあり、受注数を伸ばしながら価格も見直していく考えだ。

スカラ3は22年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で発表後、点群数を5倍近くの1秒間1250万点に増やしてスキャン能力を強化。検知した物体が何であるかを認識するソフトウェアも開発し、今年の「CESイノベーションアワード」を受賞している。

23年には米国でゼネラル・モーターズ(GM)グループの自動運転タクシーの人身事故などがあり、自動運転に対し厳しい見方が広がる。さらに開発の難しさや、これまで数百万円と言われたLiDARや開発費の問題から、自動車メーカーはシステムが運転主体となるレベル3(条件付き自動運転)以上の市場投入に慎重な姿勢を見せる。一方、LiDARは人が主体のレベル2(高度運転支援)の運転支援にも使われ、中国では「LiDARブーム」(同社LiDAR分野の最高技術責任者、クレマン・ヌヴェル氏)で需要が急増しているという。

同社は、10年後にはすべての新車に駐車支援機能やアクティブセーフティー機能が搭載されると見込む。こうした足元の需要に応えながら、将来のレベル3以上の本格的な普及を見据える。同時にソフトの更新により、さまざまな路面状況への対応力などを進化させて、安全性と快適性の向上に寄与していく考えだ。