日本自動車大学校(NATS、矢部明理事長・学校長)は、NATSレーシングチームとして参戦する「スーパー耐久レース」で今季のシリーズチャンピオンに輝いた。開幕戦で受けたクラッシュトラブルを乗り越えて獲得した栄冠だ。その勝利を支えたのは同校モータースポーツ科の学生たちの卓越したピットワークと団結力だった。
同校は、排気量1500cc未満のST-5クラスに2020年からマツダ「ロードスター」(ND5RC)で参戦している。同クラスはスーパー耐久でも参加台数が多い激戦区。その中で力強い走りを見せる「OHLINS Roadster NATS」は、念願のシリーズチャンピオンを狙うべく今年のシーズンに臨んだ。
だが3月に行われた初戦の鈴鹿5時間耐久レースで予想外のトラブルが起きた。レース終盤で首位に立った次の瞬間、マシンに2位の車両が接触。挙動を乱したマシンはガードレールに激突して大破。幸いドライバーは無事だったが、車両は全損して使えるパーツがほとんどない状態に陥った。
5月に開かれる第2戦の富士24時間レースに間に合わせるための新たなマシン製作が始まった。チームのAドライバーも務めるモータースポーツ科の金井亮忠科長を中心とした学生たちの懸命な作業により、大会の1週間前にマシンが完成。わずか2カ月という短期間ながら、高い完成度で仕上がったマシンは同レースで2位を獲得した。
続く第3戦のSUGO3時間耐久レースで今季の初優勝を挙げたチームは、その後も快進撃を見せ、終わってみれば悲劇の開幕戦を除く全5レースで優勝3回、2位2回という好成績でシーズンを終えた。
ただ毎回表彰台に上がり続けたことで、大会ごとに重いハンデウエイトが積まれていった。勝つたびに増すハンデと落ちていくスピード。それをカバーしたのが学生の素早く正確なピットワークだった。最終戦はAドライバーにピット10秒ストップのハンデも課せられたが、そのハンデを1回目のピット作業で取り返し、その後は他チームより10秒以上早いピットワークで優勝に貢献した。
金井科長は「開幕戦のクラッシュを受け、学生のデビュー戦となった第2戦以降、学生たちは本当に強くなった。シリーズチャンピオンを取れたのも学生たちの圧倒的なピットワーク力があったおかげ」と話す。参戦4年目で手にした初の栄冠。来季も新たな挑戦でシリーズ制覇を目指す。
(千葉)